ニトリ店舗の看板Photo:SANKEI

「お、ねだん以上。」を掲げ、家具量販店の代表格となったニトリ。その成功は、単なる「安さ」だけでは説明できない。同じく低価格路線を打ち出しながら日本初進出で撤退を経験したイケア、そして高級家具店から大衆路線への転換を図るも苦戦した大塚家具――。3社の歩みを比較すると、企業が本当に売るべきものは「価格」ではなく、顧客が求める価値そのものであることが見えてくる。※本稿は、経済学者の坂出 健『贅沢と欲望の経営史 あなたはなぜ今日もスタバに行ってしまうのか』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。

北欧発のイケアの特徴は
「ロープライス×大量販売」

 最近の家具業界は、昔ながらの「モノ売り」ではなくて、「暮らしの提案」のプレゼン勝負のようになってきています。

 ここでは、そんなホームファニッシングの世界を代表する三つの企業――イケア、ニトリ、大塚家具――の成り立ちや戦略の違いをみていきましょう。それぞれ、全く異なる哲学とアプローチで動いています。

 イケア(IKEA)の創業者は、スウェーデン出身のイングヴァル・カンプラードという人物です。彼は、5歳の頃から近所でマッチを売っていたという早熟な商売人でした。

 7歳になると、自転車にまたがって訪問販売を始め、安く大量に仕入れたマッチを小分けにして売るという、後のイケアの「ロープライス×大量販売」スタイルを確立しています。

 カンプラードがイケアを立ち上げたのは、なんと17歳のとき。きっかけは、成績優秀だったご褒美に、父親からもらった資金でした。

 最初は地元の家具職人の品を売る小さなお店だったイケアですが、1950年代にはカタログ販売を始め、ショールームも設けるなど、新しいスタイルを次々と導入。