食品卸業界の業績が急落している。最大手の菱食の2007年12月期決算は減収増益となったものの、営業利益では前期比半減となった2006年度の水準のまま。国分、日本アクセスなどの大手も軒並み減益基調から抜け出せない。収益構造の瓦解に苦しみ、新たなビジネスモデルを模索する卸業界の現状を明かす。
「前社長の路線を踏襲するなどとお行儀のいいことは言いません。菱食を時代に合ったかたちに早急に変えなければ、私がこれから社長をやる意味はない」
2008年2月13日、3月末日付で次期社長への就任が内定している中野勘治・菱食副社長は、自身の“お披露目”となる展示会の席で、取引先数100人を前にこう熱弁を振るった。中野副社長は2003年に菱食グループに統合されたニチレイ子会社の卸出身だ。
現相談役の廣田正氏が作り上げた近代卸のビジネスモデルで、かつてはひとり勝ちを続けていた菱食。だが今では、その成功体験の“破壊”を外部出身社長に委ねなければならないほどの苦境にある。
20期連続の増収増益記録は2006年12月期で途絶え、前期比で営業利益は半減した。2007年度はなんとか増益となったが営業利益率はわずか0.4%と低いままだ。
不振は業界全体に広がっている。2007年度は菱食を売上高と利益で抜いて食品卸業界でシェアトップに立つ国分も、収益率の低下を食い止め切れないでいる。伊藤忠グループ傘下で再編を行ない、売上高では1兆円企業の仲間入りを果たした日本アクセスも、2008年3月期は利益では統合前の2社の合計を下回る見込みだ。
長年蓄積してきた構造的課題が、市場環境の悪化に伴い一気に表面化したのが原因だ。
“予言”を裏切る問屋の成長と躓き
「問屋は将来淘汰され、日本の流通は革新的な小売業によって近代化されていく」――。こう説いた、1962年発刊の林周二著『流通革命』は、ダイエーの中内功氏など流通黎明期の経営者に多大な影響を与えた。