液晶、プラズマという現行薄型テレビパネルの次世代技術として本命視される有機EL(エレクトロルミネッセンス)。昨年末、ソニーは世界初の11インチの有機ELテレビを発売、開発競争の火ぶたが切られた。大型化・量産化に向けてはまだまだ技術的な課題が多いなか、リスクを取って難題極まる量産競争の先陣を切るのはどこか?

 「次世代のパナソニックブランドの『顔』、大画面有機ELテレビの製品化へ向けて」――。

 ネットの転職・求人サイトで、松下電器産業はこんなキャッチコピーを掲げて、有機ELの開発人員を大々的に募集している。

 プラズマへの戦略的集中投資を続けてきた松下は、液晶と共通点が多い有機ELの開発競争では出遅れ気味だったが、ここにきて追い上げに必死だ。

 「(液晶テレビを生産する)姫路工場への投資を決めたことで、ようやく有機ELの開発・生産に向けて体制が整った」(西口史郎・パナソニックマーケティング本部長)。

 ライバルのソニーも、同じサイトで有機EL関連の開発人員を募集中だ。同社は、昨年末に世界初の11インチ有機ELテレビを日本で発売、今年に入って北米・南米にも投入した。

 年内には欧州でも発売を予定しており、中国を含めた全世界展開が視野に入ってきた。今年度下半期には、220億円を投じて、有機ELパネルの大型化・量産化に向けた製造技術の開発を加速させる。

大型化のメド立たず、液晶と差別化
できずの「微妙な位置づけ」

 有機ELの開発に注力しているのは、日本勢ばかりではない。韓国サムスン電子は、グループ内で分散していた有機EL事業を統合して新会社を設立、経営資源を集中投下する。

 韓国LG電子も、今年から中小型の有機ELパネルの量産を開始、将来の大型化に向けて布石を打っている。

 大手メーカーがここまで有機ELパネルの開発に注力する理由はただ1つ。次世代テレビ市場で覇権を握るためである。

 有機ELパネルは、電流を流すと自ら発光する有機材料を利用するため、液晶のようにバックライトを使う必要がない。構造的に液晶よりも薄型化が可能なうえに、コントラストや動画の表示性能でも液晶を凌駕する。まさに「次世代テレビの大本命」といわれるゆえんである。