食品の値上げが続くなか、大手スーパーの店頭では、低価格を武器にしたPB(プライベートブランド)商品が売れに売れている。ブームに乗って小売りはPBの拡販に力を入れるが、過去の教訓を基に、イオンとセブンはそれぞれ独自の戦略を採る。幾度もブームにわきつつも消費者に飽きられたPBを定着させられるか、真価が問われる。

 「PBの生産は、最初はお付き合いでやっていた。しかし最近は、無理してでも取っていかないといけないかな、というところがある」(ある食品メーカーの幹部)

 いまや、食品メーカーにとってPBとどう付き合っていくかは、重要な経営課題となっている。

 PBとは、小売りがメーカーに生産委託し、小売りのブランドで販売する自主企画商品。今、イオンとセブン&アイ・ホールディングスの2大小売りの食品分野で急伸している。たとえば、イオンの「トップバリュ」は、今年3~5月、売上高が前年同期比32%増という好調ぶりだ。

低価格で優位に立つ

 理由は明らかに“価格”にある。

 上の表はほんの一例だが、PBはメーカーのNB(ナショナルブランド)商品に比べて、おおむね1~3割安い。価格構造は後述するが、広告宣伝費や中間物流費をカットしてコストを抑えているためだ。

 原油高や新興国の需要増で、食材そして食品の値上げが続いている。6月の消費者物価調査では、前年同月比でスパゲティが33.2%、チーズは27.3%、食パンは18.5%もそれぞれ上昇した。

 押し寄せる値上げの波に対して、消費者の生活防衛意識は高まるばかり。このため、PBは一種のブーム状態となっている。

物量と自社機能で低価格を志向するイオン

 PBが脚光を浴びたのは今回が初めてではない。1974年のオイルショック時や90年代にもPBは注目された。だが、当時のPBはNBに比べて、低価格なだけで、味などの品質は低かった。大口顧客の大手小売りに要請されれば仕方なく作るといった面従腹背のメーカーの本気度は低く、良質なものとはいえなかった。安さを売りに一時はブームとなったが、景気が回復してゆとりが出ると消費者はNB商品に戻っていった。