(8)オン・マイ・オウン ~「レ・ミゼラブル」より(岩谷時子・訳詞 クロード=ミシェル・シェーンベルク・作曲)
 本田の当たり役でもあったエポニーヌの歌。昨年の「音楽彩」で安倍なつみが本田に捧げて歌った。「モーニング娘。」のポップスも素敵だったが、「モーニング娘。」からは想像もできない演劇的な表現で歌う。ミュージカル女優らしいちょっと大げさな表現だ。舞台では大きく感情を表さないと、客席の奥まで届かない。10月24日に聴いたライブではさらに劇的になっていて驚いた。Gm(ト短調)から次々に転調し、最後はF(ヘ長調)で終わる。原調どおりに歌う。

(9)この祈り~ザ・プレイヤー~with 望月哲也(吉元由美訳詞 デヴィッド・フォスター作曲)
 米ワーナーのアニメ映画「魔法の剣キャメロット」の主題歌(1998)。セリーヌ・ディオンが歌う。一般的にはセリーヌ・ディオンと盲目のテノール、アンドレア・ボチェリのデュエット版がよく知られている。安倍版もテノール望月哲也を招いてデュエットで録音されている。ゆったりした4拍子、B♭(変ロ長調)。最後に男声と交互に上がっていくが、とても美しい。

(10)⑩夢はひそかに ~映画「シンデレラ」より(漣健児訳詞 マック・デイヴィッド、アル・ホフマン作曲)
 米ディズニーのアニメ映画「シンデレラ」(1950)のエンディング・テーマ曲。スタンダードとなっている。なんと64年前の歌だが、いつ聴いても美しいフル・アニメーションの画像を思い出す。安倍なつみが笑顔で歌っていることがわかる。F(ヘ長調)。

(11)光へ(吉元由美作詞 村松崇継作曲)
 アルバム・タイトルとなっている曲で、これはオリジナルである。10年前の本田のオリジナル「時」に当たる。「こんな素敵な曲をいただけるなんて」と話していたが、前向きに生きていくことを宣言する歌曲で、笑顔で歌う彼女によく合う。C(ハ長調)4拍子、Andante、転調なし。非常にストレートな歌だが、hiF(ファ)まで出てくる。本田美奈子の「時」と同様に、プロデューサー岡野博行の作品として共通した性格をもっている。

 アルバムのコンセプトワークとしては以上で終わるが、最後にもう1曲、ボーナストラックとして収録されていた。

(12)白のワルツ(布袋寅泰作詞作曲)
 今井美樹の歌(1997)だそうだ。F♯(嬰ヘ短調)4分の3拍子。本作の中では数少ない3拍子の曲で、クリスマス・ソングである。

アナ・トローハのようなささやくソプラノ

 本田美奈子の場合は声楽のレッスンを1993年ごろから続けていたので、2003年、04年のアルバムではソプラノの楽曲を相当数収録している。岡野からオファーされた2002年の時点で、すでに何度もシンフォニー・オーケストラと共演し、指揮者に合わせてアンサンブルすることも経験を重ねていた。

 安倍なつみは声楽ではなく、ミュージカルのヴォイス・トレーニングを積んでいるので、チェスト・ヴォイス(地声)と声楽のソプラノを結ぶミックス・ヴォイスが美しい。声量は大きくないが、繊細な裏声が耳をくすぐる。