正社員たちの考え方も変わっていった。プログラムやセッションへの参加を重ねるにつれて、契約形態や契約期間の問題に拘泥していたことがウソのように、能力開発やチームビルディングの機会を、派遣社員とともに享受した。

 ここに挙げた事例は1社の事例だが、派遣社員をかかえる多くの企業で、派遣社員と正社員の境界にまつわる、このような議論がされたり、マネジャーが頭を悩ましたりしている。

制度への偏重が企業の成長を妨げる
同じ轍を踏む国会審議の誤り

 この問題は、契約形態や契約期間といった、雇用契約上の制度の視点を偏重するが故に、より重要なことを見誤ってしまうといういい例だ。

 業績向上こそが、企業にとって極めて重要であることは論を待たないであろう。そのためには、雇用形態で差別をしたりせずに社員の能力開発を行ったり、チーム力を高める組織開発の取り組みを行ったりすることが必要だという意見に反対する人はあまりいないはずだ。

 にもかかわらず、異なる制度下にあるという制度の視点の枠組みに閉じ込められてしまったがゆえに、実施できないと思い込んでしまったわけである。

 制度に拘泥するのは、企業に限った話ではない。現在、国会で審議されている改正派遣法の議論も、同じ問題を抱えている。もちろん、法改正の議論であるから、制度の視点が当然必要である。専門業務に従事する派遣社員の就業期間を無制限から3年に限定することの是非、専門業務の概念を撤廃する是非、就業期間制限を就業するポジションでとらえるか(現行)、人でとらえるか(改正案)の是非など、制度論は避けては通れない。

 しかし、今一度原点に立ち返ってみよう。この法律の目的は、「派遣労働者の保護等を図り、もつて派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資すること」である。