1次取得の住宅は
手放せないもの
初めて住宅を買う時、だれでもドキドキするものだ。
金額の大きさや住宅ローンを抱えることへの不安、逆にこれから始まる新生活への期待……。これらが膨らみ、住宅選びをする数週間は、ドキドキする日々を過ごすことになる。多くの人にとって、一生のうちで最大の買い物となるだろう。
本連載の趣旨は、子どもが独立したり、両親が高齢になり介護や看病が必要になったり、自身の働き方や収入の変化があった場合、住まいも柔軟に変えるべきで、そのためのヒントを考えていくことだ。
しかし、実際には柔軟に住まいを変えるために、「買い替え」をする人はそれほどいない。一生のうちで最大の買い物となる住まいを買った人の多くは「終の住処」とするケースが多いのが実情だ。
前回記したように、30代半ばから後半に住宅(持ち家)を初めて買う「住宅1次取得者」が一番多い。しかし、30代後半から50代は子どもの成長など、変化が多い時期だ。本来なら1次取得した住宅を売却して、新しく住まいを買い、移り住みたいところだ。筆者もそうした柔軟に住まいを変える生活者が、これからの時代の賢い生活者の姿だと考えている。
だが、実際は「言うは易し」である。そんなに簡単にはいかない。いくら子どもの成長や生活スタイルの変化があっても、ドキドキしながら「一生に一度の最大の買い物」と意気込んで買った今の家を、“騙し騙し”住むのが現状だろう。愛着もある。
では、想いの詰まった住まいを手放すことなく、住まいを変える方法はないのだろうか――。
こんな思いが交錯する、30代後半から50代の住まい選び。今回は「買い替え」をせずに、柔軟に住まいを変えるためのヒントを探る。