直面してからでは
選択肢は少ない!
最近、多くのメディアが「実家問題」に関する特集を組んでいる。関連する書籍も増えてきた。
先月はお盆。読者の方のなかにも久々実家に帰省し、年を重ねる両親と接して、「他人ごとではないな」と思った方もいるのではないだろうか。
地方から大都市へ人口が流出し、いまや国民の半数以上は3大都市圏(首都圏、関西圏、中京圏)に住んでいる。大学進学や就職を期に都市部へ移動し、そのままその地に住み続け、結婚し、子どもが生まれる。自分と妻の仕事や子どもの学校のことを考えれば、両親に万が一の事があっても、実家に移り住むという選択は取りづらいのが現状だ。
では、両親が亡くなった後、その両親が住んでいた「実家」はどうするのか。そのまま空き家として放置するのか。売却か賃貸か、それとも更地にすべきか――。
「実家問題」とは、こういうことだ。都市圏に暮らす多くの人が、これから必ず直面する大問題で、大いに頭を悩ませることになる。
日本の平均寿命は男女とも80歳を超え、親世代が天寿を全うする頃、その親を看取る子どもは50歳を超えているだろう。その頃にのしかかる「実家問題」。考えただけでも大変だという印象を受けるのではないだろうか。
問題が起きてから対処しようとしても、選択肢は限られている。不動産関係の専門家に話を聞くと、「親が亡くなってから考えるのではなく、生前から早めに準備をすることが大切。そうすると、いろいろな選択肢がある」と話す。
つまり、40代で、両親がまだ元気な状態のときから考えておくべきことなのだ。
本連載の趣旨は、子どもが独立したり、両親が高齢になり介護や看病が必要になったり、働き方や収入の変化よって、住まいも柔軟に変えるべきという前提のもと、そのためのヒントを考えていくことだ。「実家問題」は、親の死という家族構成の変化が訪れたときの、住まいに関する問題。まさに本連載で考えるべきテーマだろう。
とても気持ちの重い問題だが、今回はとりわけ、自宅の土地と建物について、どう対処したらいいのか考えてみたい。