大手損保の日本興亜損害保険で、経営陣に対する不満が、社内外から続出している。同社は火消しに躍起だが、鳴りやむどころか、さらに拡大している。来春には損保ジャパンとの経営統合を予定しているが、年末の臨時株主総会が紛糾するのは必至だ。両社の統合計画は水泡に帰す可能性が高まっている。

 「損保ジャパンとの経営統合に反対します」

 4月中旬、日本興亜損害保険の兵頭誠社長宛てに送られた一通の文書が、社内に大きな衝撃を巻き起こしている。

 冒頭のタイトルで始まる文書(左写真)は、A4用紙3枚にわたり、統合に反対する6つの理由が書かれてある。文中には、「この経営統合計画で、得をするのは、損保ジャパンであり、日本興亜損保は大損する内容」「兵頭社長就任以来、気骨のある社員を急激に排除し、ものを言えない雰囲気に追い込んでいる」「(兵頭社長が統合を決めたのは)自分のポスト確保の観点から受け入れたもの」など、手厳しい言葉も並ぶ。

 だが、この文書が衝撃を呼んだ理由は、その内容にあるのではない。文末に書かれた送り主の名前にあった。

「北澤新、松澤建、小松敏行、下井健守」

 4人は皆、日本興亜のかつての重鎮たちである。北澤新氏は旧日本火災海上の元副社長、小松敏行氏と下井健守氏は共に日本興亜で副社長を務めた。

 そして、松澤建氏(現在は青山学院理事長)は、日本興亜の前社長であり、兵頭氏を社長に指名した張本人だ。旧日本火災と旧興亜火災海上の合併の立役者であり、その指導力やカリスマ性から、社内外での人気は今も高い。

 松澤氏は昨年6月に会長を退任後、日本興亜の本社にはいっさい姿を見せず、沈黙を貫いてきた。だが、社内外からの不満が噴出するなか、自らが矢面に立つ決断をしたと見られる。