これまで2回にわたって、人事パーソン側の成長に焦点を当ててきましたが、今後は、社内の人が育つ環境や育成施策について述べていきたいと思います。
さて、職場において後輩や部下を持つ方々は、日々、一人ひとりの特性や能力、状況に合わせて指導や支援をされているでしょう。私も同じです。個別面談や日々の会話を通し、その人の価値観や心情、得手不得手を探りながら試行錯誤しています。
とはいえ、やみくもに相手のことを探ったり、直感的に決めつけたりしてしまっては適切な指導、支援が行えません。こんな時、役立つKPI(要素)はないものでしょうか。
今回はそんな疑問にお応えし、実際にあるKPIを活用した話を、1つの事例としてご紹介したいと思います。
どのKPIに
注目すべきなのか
数年前のことです。社内で新しい部署を立ち上げることとなり、急きょ10名弱のチームメンバーを率いることとなりました。それにあたり、「メンバーの状態を把握する何らかの軸はないだろうか?」と考えていたところ、とても重要なヒントに巡り会いました。
以前、グロービス経営大学院で勉強していた時、お世話になった佐藤剛教授が、「“自己効力感”に関する研究をしている」と教えてくださったのです。
自己効力感とは、心理学者アルバート・バンデューラ(スタンフォード大学教授)が提唱した概念です。ある事柄に対し、自分が何らかの働きかけをすることが可能であるという感覚のことで、この自己効力感を通して、人は自分の考えや感情、行為などをコントロールしていると言われています。
自己効力感をシンプルに表現すると、「やればできる!」と心から自分を信じている状態、と私は理解しています。
ちなみに、自己効力感が学習意欲やストレス耐性、業務成果などに影響することは、様々な研究によって明らかになっています。
「自己効力感がそれほど有効なファクターなら、まずはこれを軸にアプローチしてみよう」。
新しいメンバーと一緒に仕事をするにあたり、まず各自の自己効力感の状態を知れば、マネジメントに役立てられるのではないかと考えました。なお、実態を認識するための測定は、佐藤教授の研究に協力させていただく形で実施しました。