東京・渋谷にお酒が飲めて深夜まで開いている図書室があるのをご存知だろうか。ネット上で資金を募るクラウドファンディングで支援者数日本一を達成し、今年7月のオープン時に大きな話題を呼んだ「森の図書室」である。
渋谷駅から徒歩7分、道玄坂を登ったところに立地する雑居ビルの一室。115m2の広々としたスペースに約1万冊の蔵書が壁一面を飾る。間接照明が生む陰影の中、静かに流れる音楽。お酒と料理を楽しみながら、ゆったりと好きな本を堪能できる読書空間だ。室内のしつらえだけでなく、コースターに書評が記されるなど、細かなこだわりも感じさせる。
「本と人がつながる場所をつくろうと思った」と語るオーナーの森俊介さん。検索によって、いとも簡単に欲しい本まで辿り着ける時代だからこそ、本との偶然の出会いを演出したのだそうだ。
「書店もジャンルごとにレイアウトされるなど、目的の本を見つけやすいように工夫されています。そうではなく、普段本を読まない人が偶然好きな本と出会う。そんなきっかけづくりの場です」と森さん。
だからこそ、マニアックな本を揃えた敷居の高いスペースにはしたくなかったそうだ。書架に並んだ本をみても、小説、ビジネス書、写真集、絵本、ノンフィクションなど実に多彩で特定のジャンルに偏っているところがない。一部の書架を除き、読んだ本をどの書架に戻してもOK。その日によって、並ぶ本が変わり書架の表情が変わっていく。まさに、偶然に本と出会う仕組みである。