子供たちに大人気の「妖怪ウォッチ」の快進撃が止まらない。
7月に発売されたゲームソフトは販売本数300万本を突破。「妖怪メダル」や、集めたメダルをはめて遊ぶ玩具「妖怪ウォッチ」は今夏、買い求める親子が続出し品薄になるなど社会現象となった。
今月、新作ゲームの発売に合わせて公開される映画の前売り券は、東宝史上最高の72万枚を売り上げており、すでに第2弾(来年冬公開予定)も決まっているほどだ。
年明けからは新しい玩具がお目見えする。その名も「妖怪Pad」というタブレット端末で、すでに正規価格の数倍の値段で予約を受け付けているネットショップもあり、再び、争奪戦が繰り広げられそうだ。
妖怪ウォッチが大ヒットした要因は、ゲームをはじめコミック、アニメ、玩具、映画とクロスメディアで展開したことが大きい。イベントも盛んで、この冬休み期間も、妖怪を捜し出すアトラクションや展示会が各地で開催される。
大ヒットの恩恵を受けているのは、ゲームを開発したレベルファイブもさることながら、玩具を手掛けるバンダイナムコ。同社は当初、生産体制が追い付かず、上期売上高を100億円超と保守的な計画を打ち出していたが、実際は倍の225億円。中国の協力工場だけだった生産拠点をフィリピンの自社工場にも広げ、貨物船に加えて航空輸送も始めるなど急ピッチで商品供給体制を整えた。
Photo by Rika Yanagisawa
「妖怪」は世界に通じるか
バンナムは今期、妖怪ウォッチ関連の売上高を400億円に大幅上方修正。これは同社の有力コンテンツであるガンダムの700億円に次ぐ規模で、仮面ライダーの256億円を軽く上回る。
「世界市場規模4兆円を誇るポケットモンスターのように“大化け”するのでは」との呼び声が高い妖怪ウォッチだが、いよいよ海外展開を始める。10月から韓国でアニメ放送がスタート、12月からウォッチとメダルを発売する。今後はアジア展開も見込まれる。
レベルファイブの日野晃博社長は以前、本誌インタビューで米国展開の方針も示しており、「海外で『YO-KAI Watch』として売り出す」と発言している。
とはいえ懸念がないわけではない。妖怪という概念や日本の小学校を舞台としたストーリーが、アジアはもとより欧米で受け入れられるのかという点だ。
特にアニメでは、日本の漫画やドラマ、歌、昭和のギャグからインスピレーションを受けたと思われる表現が頻繁に登場する。それが作品の面白さにつながり、大人も楽しめる要素となっているのだが、関係者は「直訳するだけでは難しいだろう」と口をそろえる。
海外展開を成功させるには、いかに現地化を図るかが鍵といえそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)