消費再増税先延ばしに関する議論の2回目は、安倍首相の経済面でのブレーンを務める本田悦朗内閣官房参与。本田氏は1年余り前の消費増税に関するインタビューでも、増税に強い懸念を示していたが、GDP成長率を見る限りその懸念が現実のものになった形だ。当然ながら、本田氏は安倍首相の消費再増税の1年半の延期を高く評価する。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集長 原英次郎)

デフレからの脱却を
確認する前の再増税は危険

ほんだ・えつろう
1955年生。東京大学法学部を卒業後、(旧)大蔵省入省。在ソ連邦大使館、世界銀行審議役等を経て2000年より在ニューヨーク総領事館兼在米国大使館公使。ニューヨーク勤務時代に現地のエコノミスト等とデフレ脱却について議論。その後、外務省欧州局審議官、欧州復興開発銀行理事、財務省政策評価審議官等を経て、2012年より静岡県立大学教授。同年12月、第2次安倍内閣発足と同時に内閣官房参与。著書に『アベノミクスの真実』(幻冬舎)等。

 私は来年10月からの消費税の再増税は大変危険であると思っており、2017年4月からの引き上げに変更すべきだと考えていました。

 ただ、私自身は必要な財源を確保するために、消費税率の引き上げが必要であることは、十分理解していますので、デフレ脱却を確認した後に増税すべきで、脱却を確認する前に増税を行うことは、極めて大きなリスクを伴うと主張していたわけです。

 その理由は、現在アベノミクスによって、15年間続いたデフレから脱却しつつあるという、まさに現在進行形のプロセスにあるからです。すでにいろんな経済指標を見ていると、デフレではないけれども、脱却までには至っていないのではないか。脱却と言うためには、国民の予想インフレ率が、2%程度のプラス領域で安定してこないといけない。予想インフレ率が安定してくると――日本銀行が目指しているのはCPI(消費者物価数)コアで2%ですが――それも安定してくるはずです。

 私の意見では、安定したと言うには少なくとも10ヵ月、できれば1年間くらいの安定を確認するまでは、デフレ脱却宣言はできないと思います。そうでないと、またデフレに戻る可能性がある。それまでは、増税を控えるべきで実施してはいけない。

 もう一つは実質賃金の観点からです。アベノミクスはデフレから脱却してインフレに持っていこうという政策ですので、徐々にデフレ領域から抜け出すにつれて、需要は出てきている。去年1年間を見ても、消費、それからやや遅れて投資も盛り上がりつつある。