消費税増税議論の3回目は、現在、内閣官房参与を勤める本田悦郎静岡県立大学教授に、意見を聞く。内閣官房参与とは、いわば首相のアドバイザーを勤める非常勤の国家公務員である。本田教授は、エール大学の浜田宏一名誉教授とともに、経済分野におけるアドバイスを行っている。本田教授の提案は、来年4月から毎年1%ずつ5年間わたって消費税率を引き上げていくというものだ。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集長 原英次郎、撮影/同編集部 片田江康男)

生まれつつあるインフレ予想を
消費増税が冷やしてしまう

ほんだ・えつろう
1955年生。東京大学法学部を卒業後、(旧)大蔵省入省。在ソ連邦大使館、世界銀行審議役等を経て2000年より在ニューヨーク総領事館兼在米国大使館公使。ニューヨーク勤務時代に現地のエコノミスト等とデフレ脱却について議論。その後、外務省欧州局審議官、欧州復興開発銀行理事、財務省政策評価審議官等を経て、2012年より静岡県立大学教授。同年12月、第2次安倍内閣発足と同時に内閣官房参与。著書に『アベノミクスの真実』(幻冬舎)等。

 まず、この15年間、消費者物価指数をみると、日本経済はずっとデフレに痛めつけられてきたという認識が大前提です。これまで何回かデフレ脱却のチャンスはありました。

 一つは2000年8月の日銀によるゼロ金利解除の時。まだデフレを脱却していないにもかかわらずゼロ金利を解除してしまって、デフレからの脱却のチャンスを失ってしまった。2回目は2006年3月の量的金融緩和の解除です。当時は、確かに消費者物価指数は4ヵ月連続して若干のプラスになった。ところが、消費者物価指数は5年に1回基準値を改定するのですが、改定した結果、実はまだデフレだったということが後で分かった。つまり、量的金融緩和を解除するのは、明らかに早すぎた。その後、08年にリーマンショックが起こって、デフレが大きくなり現在に至っています。

 そういう状況の中で、安倍総理が正面からデフレ脱却を政権の目標として掲げて、まさに実行し始めた段階です。アベノミクスは3本の矢と言われますが、第3の矢すなわち成長戦略の前提となるのがデフレ脱却です。金融政策のみならず財政による景気刺激策もデフレ脱却に役立ちますが、デフレ脱却実現の主役はあくまでも金融政策です。デフレというのは貨幣的な現象ですから。