見るのは過去ではなく
将来へのポテンシャル
2つめのズレも、1つめの誤解の延長上で語ることができます。
すでに述べたように、――そして面接官の質問の仕方も悪いのですが――学生の皆さんは学生時代のハイライト経験を意義ありげに語ることを競いがちです。
ですから、特にハイライトになるような経験がない学生は、語れることがなくなり自信を失いがちで、ESや面接に自信が持てなくなります。面接で語ることをつくるために、海外に行ったりなどという本末転倒のことを考える人まで出てきてしまいます。
「ヘッドハンティングとは、その候補者の過去ではなく、将来を買うことだ」
これはとあるヘッドハンターから聞いた言葉です。
そう、採用という仕事は、過去に素晴らしい業績を上げた人を採るのではなく、「将来に素晴らしい業績を上げてくれると確信できる人」を採る仕事なのです。財力に任せて他球団で実績を上げた選手をかき集めてくるようなプロ野球球団がやっている仕事は、本当の採用とはいえません。
過去に何をやった人かではなく、これから入社して何をやってくれる人かを見極めることが「採用担当者」の仕事なのです。
これは新卒採用でもまったく同じです。
にもかかわらず、大学生活のハイライトを競わないと(競わせないと)いけないと感じてしまっているところに、第2のズレがあるのです。
しかし、ほとんどの企業で、面接官は「学生時代にやったこと」「学生時代に力を入れたこと」を聞きます。これはなぜでしょうか。
当たり前なのですが、将来のことは霊媒師でもなければわかりません。普通の人である面接官にとっては、将来は結局は過去から類推するしかありません。だから、「学生時代に力を入れたこと」を聞くのですが、それは過去にやったこと自体の良し悪しを評価しようとしている質問なのではなく、そこから将来に何をやってくれそうかを類推するための材料を探しているのです。
過去について聞く際には、以下の3つの点に特に注意します。
(1)他人がやった事実について、自分だけでやったように調子よく語ってはいないか
(2)たまたまうまくできちゃった事実ではないか(再現性はありそうか)
(3)限られた同質的な人間関係の中での感動的ドラマではないか