採用手法が多様化し始めている。「みんなと同じ」やり方を長く続けてきた企業の多くが、自社に合った人材は、自社ならではの選考手法でなければ採れないのでは?と思い至った。ミスマッチがなぜ発生するか。その理由に気づき始めたとも言えるだろう。
本稿では、昔懐かしい「縁故採用」について、再評価を試みたい。
岩波書店の縁故採用は
本当にいけないことなのか?
やや旧聞に属するが、岩波書店が2013年卒採用において、「岩波書店著者あるいは岩波書店社員の紹介状」を応募要件とし、話題となった。
かつて出版を希望していた者にとっては、既視感にあふれる事案だった。
その昔、岩波書店は同じような条件を入社希望者に課しており、それがクリアできずに諦めた学生は数多かった。
私も「それじゃあ岩波は無理だな」と瞬時に諦めた学生の一人だ(岩波のようなカタい出版社は、はなから志望対象ではなかった、というのが真相であるが)。
三十数年前でさえ、公然と縁故募集を謳う企業は多くはなかった。縁故募集とは、テーブルの下で交わされる密約のようなケースがほとんどだったと思う。
その当時、岩波書店の縁故採用は、批判されることはなかったように思う。「あの会社はいつもそうだよね」と、出版希望の学生はみな認識していたはずだ。
それから30年経ち、2013年の岩波書店の方針発表は大きな反響を呼んだ。有体に言えば、「非難囂々」だった。
「アンフェアである」、「クローズドな採用手法はいけない」、「上位校の学生が有利になる」、「排他的ではないか」。そんな批判がネット上を飛び交った。
しかし、本当にそうだろうか。