安倍政権になってから、確かに名目GDPは増加傾向にあった。ただ、実質GDPは民主党政権時代より大きく伸びたかというと、意外にもほとんど変わらない。さらに、名目、実質ともに目標数字にはまだ及ばない。むしろ、4月の消費税率引き上げで、景気は後退している。

 13年の4月に、安倍政権と実質的に一体化している黒田日銀が「異次元金融緩和」を開始した。緩和が一番効いたのは株と為替。図表2に見るように株価は大幅に上昇、為替も円安に大きく動いた。日銀は消費税の影響を除いた消費者物価上昇率2%を目標としている。黒田緩和が発動されて以降、消費者物価もマイナスを脱して、対前年同月比で1.3%程度の上昇を続けてきた。

 日銀によれば4月の消費税率3%の引き上げによる物価上昇への影響は約2%で、このため消費者物価の上昇率は一気に3%前半にまで跳ね上がった。だが、消費増税により個人消費が予想通りには回復しないうえ、石油価格の下落もあって、消費者物価上昇率は8月以降低下してきている。10月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の上昇率は2.9%となり、消費税率引き上げの影響2%を除けば0.9%と、1%を切ってきた(図表2)。GDP、物価とも弱くなってきたため、10月末に、黒田日銀がこれまた市場が驚く金融緩和第2弾を打った。

 消費税率の引き上げはアベノミクスに入っていないと言うものの、最終的に、引き上げの判断を下したのは安倍首相だ。せっかく上向きかけた景気のモメンタムを、後ろに引き戻したわけで、税率を引き上げたのは判断ミスと言われてもしかたがない。