「安全が確認された原子力発電所は再稼働させる――」。この基本方針を掲げて進められた安倍政権の原発政策とエネルギー政策。11月には九州電力川内原子力発電所の1、2号機の再稼働が地元自治体に認められ、安倍政権は公約通りにエネルギー政策を前進させているかに見える。しかし、筆者から見れば問題は多い。ここまでの安倍政権のエネルギー政策に点数をつけるなら、40点である。
1951年生まれ。和歌山県出身。1975年東京大学経済学部卒業。1983年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。同年青山学院大学経営学部専任講師。1987年同大学助教授、その間ハーバード大学ビジネススクール 客員研究員等を務める。1993年東京大学社会科学研究所助教授。1996年同大学教授。経済学博士。2007年より現職。『東京電力失敗の本質』(東洋経済新報社)、『電力改革』(講談社)など著書多数。総合資源エネルギー調査会基本政策分科会委員。
Photo by Naoyoshi Goto
選挙結果と
原発再稼働
安倍内閣が発足した当初、2012年12月の総選挙と2013年7月の参議院議員選挙の結果を受けて、運転停止中の原子力発電所がいずれ雪崩をうって再稼働するのではないかという見通しが一部にあった。原子力規制委員会が決めた新しい規制基準をクリアした原発については、迅速に再稼働させるというのが、総選挙や参院選で圧勝した自民党の政策だったからだ。
しかし、事態はそれほど単純ではなかった。そもそも自民党は、総選挙でも参院選でも原発政策について、中長期的な見通しを明言しない方針をとった。原発に対する国民世論はいまだに厳しいと読んだうえで、原発政策を争点から外したほうが、勝利をより確実なものにできると判断したからだ。
選挙前にその内容を明言しなかった以上、たとえ選挙に大勝したからといって、自民党の原発政策が支持されたことを意味しない。事態を複雑にしたのは、このような事情があったからだ。