当時、一般病床は105万床、療養病床は38万床あった。療養病床のうち医療療養病床は25万床、介護療養病床は13万床になっていた。体が衰弱してきたが、1人暮らしなどで身の回りの世話をしてくれる家族がいない。といって介護施設は満室や利用料が高額で入居できない。あるいは家族が居ても対応できない。そんな高齢者が相変わらず、療養病床に押し寄せて来ていたのである。本来なら介護施設で受け入れる人たちである。施設不足であれば、社会福祉法人や医療法人だけに建設・運営を任せるのではなく企業参入も検討されるべきだろう。

 そこで、この療養病床のうち介護療養病床の患者を、老人保健施設を主軸に有料老人ホームやグループホームなど他の居住系施設に移そうというのが前述の「介護療養病床の全面廃止」計画だ。さらに医療療養病床も15万床に減らすこととした。

 医療療養病床の増加に比べ介護療養病床が増えなかったのは経営者への収入に違いがあったからだ。入所者一人あたりの1ヵ月の平均費用を見ると、介護療養病床は41万円なのに対し、医療療養病床は49万円であった。医師や看護師の配置人数が異なるからだ。

 介護療養病床でも、同じ介護保険施設の特養や老健と比べると報酬は高額である。利用者はその1割を負担する。本当にそれだけの医療スタッフが必要なのか。

 厚労省は「療養病床のほぼ半数の入院患者は医師による処置が必要ないことが分かった」と説明した。中央社会保険医療協議会(中医協)の調査では、医療処置が必要ない人と週一回程度の医療提供で十分な人と合わせると8割以上になる。

 高額な報酬が不要な医療スタッフのために設定されている。無駄な仕組みは消えるのが当然だろう。

民主党政権で「廃止プラン」凍結
今年11月、介護療養病床存続に逆戻り

 ところが、この厚労省の英断は政治に翻弄される。2009年8月の総選挙で自民党が敗北し、民主党が政権を取るや、従来の政策を片端からひっくり返す。「コンクリートから人へ」のスローガンで公共事業を縮小するなど前向きな施策もあったが、療養病床については支持者に迎合し後ろ向きであった。

 介護療養病床の廃止を自公政治と決めつけて廃止プランを凍結、廃止期限を2017年まで延長した。「脱自民党政治」への目先の思いが強く、介護保険の遠大な理念である「在宅重視」を無視してしまった。その後、復帰した自公政権も廃止期限の延長を引き継いだ。

 それが、この11月にはとうとう存続方針に切り替わってしまった。社会的入院を解消しようにも、在宅医療など退院後の整備が伴っていないとの判断からだ。終末期医療の病床を現状では療養病床に求めざるをえないとも明言。地域包括ケアシステムの否定になりかねない。