12月5日、円は対ドルであっさりと120円を突破し、7年4ヵ月ぶりの円安水準となった。黒田日銀の「ハロウィーン緩和」以降、円安はその歩みを速めている。円安“弊害論”も強まる中で、円安はどこまで進むのか。市場では政府・日銀の円安許容度が広がっているという見方も出ている。

鮮明になった金融政策の
違いが急速な円安を招いた

 10月末の日本銀行による追加緩和以来、円・ドルは109円から120円へ、わずか1ヵ月の間に約10円もの円安となった。ここへきて急速に円安に動いたのは、日米の金融政策の違いがより鮮明になっためだ。

 そもそも為替市場の流れ自体も、円安方向にあった。円・ドルの最も基本的な需要・供給要因は経常収支。我が国の経常収支は周知のように貿易収支が赤字に転じたことを主因に、毎月、縮小傾向にあった。昨年1~9月の経常黒字は約4兆6000億円だったが、この1~9月は約1兆2000億円にまで黒字が減ってしまった。その分ドル売り・円買いの圧力が小さくなっている。

 一方、超量的緩和によるゼロ金利と円安を見越して、実は、「じわじわとにじみ出る」(市場関係者)ように、円は海外へと動き出している。海外の債券、株式の取得は毎月1兆円規模で続いている。これは円売り・ドル買い要因だ。つまり、ドル売りの供給圧力が小さくなる一方で、ドル買いのニーズは高まっている。

 そうした地合いの上に、10月29日にはFRB(米連邦準備制度理事会)がQE3(量的緩和第3弾)を終了、間髪をいれず同31日には黒田日銀が「ハロウィン緩和」を発表した。米国は実質的なゼロ金利政策は維持しつつも、市場に大量のマネーを供給する政策に終止符を打つ一方、日銀はマネーを供給する政策を一段と拡大する。ドルと円の比でみれば、円の供給が増えるため、円安要因となる。

 加えて、5日発表の米国の雇用統計で、市場の予想よりもよい数字が出て、米国の景気は強いとの見方が広がった。量的緩和終了に続く、金融政策の正常化=金利の引き上げが近づくのではないかと市場は判断。短期の投資マネーが円売り・ドル買いに動いた。これが足下で円安が急速に進んだ背景だ。