しかし裁判を通じて分かったことは、幼稚園のマニュアルや避難訓練の実態などわずかなことだけだった。

「隠されている真相は絶対にあると思う。やっぱりそれを知りたい」

日和幼稚園訴訟「本当に和解でよいかすごく悩んだ」 <br />遺族が語った葛藤と新たな一歩幼稚園バスが見つかった現場に、学校の安全管理に取り組む専門家や幼稚園事故の遺族を案内。いつまでも議論が尽きなかった(2014年9月26日石巻市内)
Photo by Yoriko Kato

 美香さんがそういうと、当時6歳の春音ちゃんを失った西城江津子さんがこう言葉をつないだ。

「先生たちが裁判で主張したように、幼稚園の脇にある防災無線が聞こえなかったことがもし本当だとすれば、今度は石巻市に責任があるということになります。真実はちゃんと明らかにしてくれないと、今後の教訓にならないんですよね」

 幼稚園のすぐ側にあった防災無線のこと。バスが幼稚園を出るまでのやり取り。地震が起きてからの先生たちの津波に対する認識。幼稚園内の日頃の人間関係。助かったバスの運転手の心境。バスの中での子どもたちの様子……。

 真実を知りたい部分の話になると、いつも会話が止まらなくなる。めぐみさんの夫の純さんも、3日に行われた記者会見で、今回の和解を「真実を知るための再スタート」と位置づけた。

大川小、東保育所、私立ふじ幼稚園……
他の裁判への影響は

 津波災害を受けた被災地ではいま、学校・保育所、施設等の管理責任を問う複数の裁判が進行している。それぞれの裁判の原告同士で情報を交換し合っている場合もあり、法廷では別の裁判に参加している遺族の姿を見かけることも多い。

 日和幼稚園の遺族たちは、「大川小学校や宮城県山元町の私立ふじ幼稚園や町立東保育所等の話を聞くと、組織トップの安全管理に対するずさんな姿勢が、なんだか日和幼稚園と似ていると思ってしまう」と話す。当事者でもそう感じるそれぞれの裁判に、今回の和解はどのような影響があるのだろうか?

 4日には同じ仙台高裁で、七十七銀行女川支店の行員12名が死亡・行方不明となり、3人の遺族が銀行側に計2億3500万円の損害賠償を求めた裁判の控訴審の弁論が行われた。

 記者会見で、記者から日和幼稚園の和解内容についての感想を求められた遺族側の代理人は、「影響という面では自分たちの事例の射程外」と断りつつ、「裁判所が幼稚園側には法的責任があると認識していたことが伝わってくる前文だと思う」と評価した。