日本唯一のDRAM(読み書きが自由な半導体記憶素子)専業、エルピーダメモリが米マイクロン・テクノロジーに競り勝ち、台湾陣営との協業にこぎ着けた。台湾経済部は苦境に喘ぐDRAMメーカーの救済を決断、受け皿会社となる台湾記憶体公司(TMC)の設立準備を進めており、その技術提携先に選定されたのだ。
半年ほど前の2008年10月6日、坂本幸雄・エルピーダメモリ社長の姿は台北にあった。07年に設立した台湾DRAMメーカーの力晶半導体との合弁、瑞晶電子への出資が評価され、馬英九総統によって「台湾投資ベストパートナー賞」に表彰されたのだ。
授賞式に続く蕭萬長副総統との懇談の席で、坂本社長はこう切り出した。「台湾1国にDRAMメーカーが6社もある。なぜ1社にしないのか。小さな会社がそれぞれ独自に巨額の投資を行ない、価格を競い合うのは非効率だ」。
一時はファウンドリー(受託生産会社)の聯華電子(UMC)の日本法人社長を務めるなど、台湾半導体を知り尽くした坂本社長の進言に、蕭副総統は深い理解を示したという。振り返れば、“日台連合”はここに始まった。
米マイクロンに競り勝ち
TMCと株式持ち合いへ
「DRAMは2年で15分の1に値崩れした。5~10%程度の供給過剰でこれほど下落するのは、理屈に合わない」。坂本社長はこう吐き捨てた。08年末には、標準品の1ギガビット単品の大口スポット価格が0.6ドルまで下落していた。
撹乱要因は、台湾メーカーをはじめとする下位メーカーの在庫処分だ。前例のない世界不況のなかで、急速に財務体質が脆弱化して資金繰りが悪化したために、在庫を安値で売りさばき、現金確保に走ったのだ。
価格破壊は、自らの業績に跳ね返った。たとえば力晶の08年1~9月期は、320億台湾ドルの最終赤字(売上高は472億台湾ドル)、南亜科技のそれは248億台湾ドル(同301億台湾ドル。1台湾ドル=約2.94円)と、大きく悪化した。「六社合計の負債額は1兆2000~1兆5000億円に達しており、なかには実質債務超過の会社もある」模様だ。