突発性難聴と聞くと、非常に稀な病気と思われがちだが、誰にでも突然発症する可能性がある病気だ。一般的に高齢者の発症が多いといわれるものの、過労や精神的ストレスも関係しているためか、ビジネスパーソンにも増えている。突然、耳が聞こえなくなったらどうすれば良いのか――。年間100万人に対して約300人が発症しているという突発性難聴について、慶應義塾大学医学部の神崎仁名誉教授に話を聞いた。(聞き手/医療ジャーナリスト 渡邉芳裕)

神崎 仁(かんざき・じん)
1937年東京生まれ。慶應義塾大学医学部教授、慶應義塾大学病院長、国際医療福祉大学熱海病院院長を経て、国際医療福祉大学教授、慶応義塾大学名誉教授。専門は中耳炎、メニエール病、聴神経腫瘍、難聴、補聴器、耳鳴り、めまいなど耳科学、神経耳科学。日本耳鼻咽喉科学会総会会長、日本耳鼻咽喉科学会副理事長・理事、日本聴覚医学会理事長・総会会長、国際聴覚医学会会長、日本めまい平衡医学会理事・総会会長、日本耳科学会理事・総会会長を歴任。

勝負は発症から1週間!
突発性難聴は“内耳の狭心症”

――私たちは普段当たり前のように音を聞いていますが、そもそも耳で音が聞こえるのはなぜですか?

 耳は外のほうから「外耳(がいじ)」、「中耳(ちゅうじ)」、「内耳(ないじ)」という3つの部分に分けることができます。耳の穴から鼓膜までが外耳、鼓膜の奥は中耳と呼ばれています。中耳のさらに奥には、中にリンパ液が入っているうずをまいた管があります。これが蝸牛とよばれる部分です。カタツムリのような形をしていることから蝸牛(かぎゅう)と呼ばれています。

 皆さんが聞こえる音は、まず、耳たぶ(耳介)で集められ、外耳道(がいじどう)を通り、鼓膜を振動させます。鼓膜の内側に、3つの小さな骨、耳小骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨)があるのですが、鼓膜が振動するとこれらの小さな骨が動きます。一番内側のアブミ骨に伝達された振動は、蝸牛の中のリンパ液に伝達され、リンパ液が揺れることにより、蝸牛の基底膜を振動させ、その上にある感覚細胞に伝わります。この感覚細胞が振動を電気的な刺激に変換させ、最終的に脳に伝わることで、初めて音として認識されるのです。

――最近、ビジネスパーソンの間でも増えている「突発性難聴」とはどんな症状でしょうか?

 難聴は、どこに異常があるかにより、大きく分けて「伝音難聴」と「感音難聴」の2つに分類されます。まず、3つの耳小骨と鼓膜を含む「中耳」に、例えば中耳炎や3つの耳小骨の連鎖のどこかが外れるなど何らかの疾患が起こり、音が蝸牛に伝わらないことによって、耳の聞こえが悪くなっている状態を「伝音難聴」といいます。これに対して、蝸牛から大脳までの間に障害がある場合は、「感音難聴」といいます。さらに「感音難聴」には、蝸牛から脳までの蝸牛神経の障害と脳の障害で起こる中枢性障害があります(図参照)。