論文と異なる作製方法

 STAP細胞が幻と判明した今、今後の課題はなぜ不正論文が世に出てしまったのかという真相解明に尽きる。だが、今回の会見でも、理研の“体質”に疑問を抱かせるような場面が散見されるなど、解明には程遠いと言わざるを得ない。

 例えばその一つが、論文とは異なるSTAP細胞の作製方法だ。論文では細胞の刺激に「塩酸」を使っているが、検証実験では「ATP」という物質も試している。相澤慎一・検証実験チームリーダーは「塩酸よりATPの方が作製効率が良いと小保方さんが言っていた」と説明するが、なぜこれまで公表しなかったのか。

 特に理研は、論文に疑義が持たれた3月、詳細なSTAP細胞の作製手法(プロトコル)を公表している(7月に撤回)。この段階で、プロトコルの責任者だった丹羽リーダーもATPの情報を知っていたというが、「論文との齟齬があると考え、プロトコルに記述しなかった」と述べた。一連の理研の対応について、内部でどのような判断がされてきたか明らかにされるべきだ。

 また、安易に小保方氏の依願退職を認めた判断も疑問だ。「退職金は出ない。調査委員会からも支障はないと返事を受けた」(坪井裕理事)とするが、理研職員でなくなる小保方氏が、今後も続く外部調査に協力するかは疑わしい。

 情報を後出しにするなど、社会常識と懸け離れた判断をする。こうした姿勢が改まらない限り、理研の自浄作用には期待できないだろう。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 大矢博之)