今年中に相当思い切った
追加緩和が不可欠

ひろき・たかし
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト。上智大学外国語学部卒業。国内銀行系投資顧問、外資系運用会社、ヘッジファンドなどでファンドマネージャー等を歴任。長期かつ幅広い運用の経験と知識に基づいた多角的な分析に強み。2010年より現職。青山学院大学大学院(MBA)非常勤講師。テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」、ラジオNIKKEI等、メディアへの出演も多数。マネックス証券ウェブサイトにて、最新ストラテジーレポートが閲覧可能。著書に、『ストラテジストにさよならを 21世紀の株式投資論』(ゲーテビジネス新書)、『9割の負け組から脱出する投資の思考法』(ダイヤモンド社)、『勝てるROE投資術』(日本経済新聞出版社)がある。

 2015年末の日経平均株価の予想は2万2000円。今年も株価上昇が続くと僕が考える最大の要因は、政治的な背景だ。

 2016年7月には参院選がある。そこで安倍首相は、憲法改正に向けて衆参両院で賛成を得るため、何としても3分の2以上の議席をとりたいはず。この参院選は、安倍政権が誕生してから4年が経ち、アベノミクスの真の成果が問われる選挙になる。そうなると、参院選までには何らかの成果を国民に示さなければならない。

 そもそもアベノミクスは「デフレ脱却」を掲げて登場した。「2015年度にかけて物価目標(消費者物価の前年同期比上昇率2%)を達成すること」が第一目標だ。しかし現状、デフレから脱却できているかというと全くできていない。

 参院選のある2016年夏に「デフレ脱却宣言」を出すためには、そのときに2%に達するようでは遅い。2%程度の物価上昇率で安定的に推移して、初めてデフレ脱却宣言ができるからだ。

 ということは、遅くとも2016年3月には2%程度に達していなければならない。しかし、それは至難の技。逆算すると今年、相当思い切った追加金融緩和が必要になる。

 日銀の黒田総裁としても、2015年度中に物価目標を達成したいはずだから、日銀も安倍政権、アベノミクスに完全に同調するだろう。

次の黒田バズーカは
ETFの異次元買入?

 では、具体的にどのような追加緩和が予想されるのか。

 僕が提案したいのは、すでに限界に来ている国債購入は国債残高を維持する(償還になる分だけ買う)範囲にとどめる一方、ETFの買入枠を大々的に増やし、それも4月と10月の年2回増枠するという、思い切った手段。そうでもしないと2%に届く見込みはない。

 日銀は2014年10月31日の金融政策決定会合で、物価の下押し圧力が残り、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがあるとして、その顕在化を未然に防ぐため、「量的・質的金融緩和」の拡大を決定した。