イギリスの女性経営者で、異色の化粧品会社ザ・ボディショップのトップ、アニータ・ロディック(1942~2007)は、ひょっとするとこの会社を始めていなかったかもしれない。
ロディックは、教師になる教育を受けたにもかかわらず、1976年にザ・ボディショップ第1号店を立ち上げるまでになったのは、さまざまな要因の数奇な絡み合いからだった。ところが、ザ・ボディショップの理念─環境にやさしい化粧品であることを基本に、家内工業をその出発点とする─はすぐにブライトンにあるこの小さな第1号店の規模を超えてしまう。
もし同社が昔ながらの手法で大企業へと成長していたとしたら、のちにザ・ボディショップを成功に導くことになる、小さな企業にある独特の魅力をとうに失っていただろう。
ロディックはフランチャイズ方式でザ・ボディショップの拡大を図った。
これは当時のイギリスでは比較的新しい考え方で、同社の理念にみなぎる活力や情熱を持続させるだけの力があった。2000年には全世界に1500を超える店舗を展開、ロディックは多くの時間とエネルギーをさいて、自分の心にしたがってその倫理的な理想を追求している。
成功への階段
1942年、サセックスに生まれたロディックは、4人きょうだいの3番目の子どもだった。両親は、のんびりした浜辺の町リトルハンプトンで北米スタイルの小さなレストランを営んでいた。中学校を卒業すると、有名なギルドホール音楽演劇学校からの入学の誘いを断って、バスにあるニュートンパーク教育大学に進学する。
大学を卒業後、ロディックは職を転々とした。パリではインターナショナル・ヘラルドトリビューン紙で働き、イギリスでは教鞭を取り、そしてジュネーブでは国連で働いている。国連のあと、ロディックはヒッピースタイルの旅に出て、アフリカ、極東、そしてオーストラリアと、世界中を歩き回った。