2015年は戦後70年の節目でもある。増税再々延期という選択肢を断ったアベノミクスはまさに正念場を迎える。集団的自衛権ではいよいよ関連法の改正が行われ、具体的な姿が浮かび上がってくるはずだ。わが国のエネルギー構成をどうするかも決めなければならない。安倍・習会談で関係改善の糸口をつかんだ日中関係はどうなるのか。世界情勢を見れば、原油価格の暴落が暗い影を投げかけている。

平和でやさしいイメージの未(羊)年とは打って変わって、課題山積。そこで著名な経営者、識者の方々にアンケートをお願いし、新年を予想する上で、キーとなる5つのポイントを挙げてもらった。第7回は、ネットイヤーグループ社長兼CEOである石黒不二代氏の見通しをお伝えする。

(1)IoT(インターネット・オブ・シングス)に待ったなし

いしぐろ・ふじよ
ネットイヤーグループ代表取締役社長兼CEO スタンフォード大学にてMBA取得後、シリコンバレーにてハイテク系コンサルティング会社を設立し、日米間の技術移転等に従事。2000年よりネットイヤーグループ代表取締役として、ウェブを中核に据えたマーケティングを支援し独自のブランドを確立。著書に『言われた仕事はやるな!』(朝日新聞出版)がある。

「モノのインターネット」とも呼ばれるIoT(インターネットオブシングス)の流れが加速する1年になるだろう。私は現在、経産省主催の産業構造審議会 商務流通情報分科会に属する「情報経済小委員会」の委員を務めているが、実際に同委員会内でも経産省はこのIoTにフォーカスし、力を入れはじめている。

 これからはいよいよモノにインターネットが取り込まれる時代になる。特に現在の日本を牽引する基幹産業である自動車や電機の分野においてインターネットが組み込まれはじめるだろう。しかし私は、日本企業がこれまでと同じような発想でインターネットを活用するのであれば、根本的な考え方の違いからアメリカに完敗するだろうと見ている。

 現在の日本は、インターネットの分野でアメリカに完全に負けていると言っても過言ではない。ご存じのとおり、アマゾンやグーグル、フェイスブックといったプラットフォーマーに後塵を拝している。彼らは、世界中の多くの人に閲覧・利用されることを前提にECサイトやSNSを構築し、クラウドベースでデータ収集を行うことを最大の目的と捉えている。彼らが持つリコメンデーション機能がその典型で、多くの人が使えば使うほどデータが蓄積され、その精度が上がっていく。

 そうしたなか、グーグルは自動車産業へ本格参入しはじめた。自律走行車の実用化を目指すグーグルカーは、クルマ自体を膨大なデータを生み出す源と捉え、データが蓄積されるほど精度の上がる仕組みになっている。つまり、この大手IT企業が仕掛ける膨大なデータ活用によって自動車産業は飛躍的に変貌する可能性を秘めているのだ。家電でも同様のことが起こりうると考えられるが、日本企業がそれに先行しているとはとても言い難い。

 今の“アメリカ独り勝ち”の状況を考えると、日本はもっと真剣にモノにインターネットを組み入れ始めたとき、データが作用するインパクト・重要性を考えてモノづくりをすべきだろう。日本の基幹産業の根幹さえ揺るがす事態を、発想を変えてチャンスにしたいものだ。