近年、にわかに耳にする機会が増えたIoT(Internet of Things、モノのインターネット)。あらゆるモノがインターネットに接続して、さまざまなデータをやり取りすることで新しい価値を生み出そうという発想だ。実際にはどんなジャンルで取り組みが進んでいるのだろうか?

IoT活用を3つのジャンルで考える
製造業での活用に大きな期待

 IoTと言えば、スマートフォンで電子レンジを制御できたり、スーパーマーケットとつながっている冷蔵庫といった商品をイメージする人が多いかもしれない。確かに、そうした使われ方にも大きな期待があるが、製造業での活用ポテンシャルも非常に高い。今回は、新しい概念であるIoTの現状と将来性について、整理してみたい。

 ガートナーでは、IoT活用を3つのカテゴリーに分けて考えている。

ハン・ルホ
ガートナー バイスプレジデント兼フェロー

 1つ目が消費者。つまり一般ユーザーだ。この領域では、まだIoTはほとんど浸透していない。インターネットにつながっているモノといえば、パソコンやスマートフォンなど、ごく一部のデバイスだろう。ガートナーでは、消費者レベルにIoTが浸透するには、少なくともあと5年はかかると考えている。

  2つ目が、すでにIoTを部分的に取り入れ始めている企業群だ。製造業や病院、電力関連などが、このカテゴリーに入る。もっとも、外部と積極的につながっているというよりは、内部でのつながりにとどまっている企業も多いから、取り組みはまだまだ道半ばだ。

 病院を例に挙げれば、患者の体温や血圧などのバイタル情報をiPadで見られるというような取り組みが挙げられる。面白い取り組み例では、洗濯物のカゴにセンサーが取り付けられていて、カゴが満杯になるとスタッフにアラームで知らせる、というようなものもある。

 工場はどうだろうか。ゼネラル・エレクトリック(GE)では、発電用のガスタービンにセンサーを取り付けていて、30秒ごとに250ポイントでのデータを読み込んでいる。データの種類は、温度や回転数などだ。これらをエンジニアが解析して制御に生かすことで、発電量が5%向上し、燃料費は年間1エンジン当たり50万ドル削減できた。