前回の連載第3回では、デジタルマーケティングマネジャーが、全体最適を実現する手段としてITを捉えることの重要性を説明した。今回は、もう1つの重要なポイントである、ITは単なるツールであり、ビジネスからITを考えるという側面からの失敗を考察してみよう。
マーケティングの目的とはなにか
日本マーケティング協会によると、マーケティングとは「企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である」と定義されている。
では、マーケティングの目的とは何だろう。
「モーケティング(儲けること)」と即答する人もいるが、日本マーケティング協会は定義から目的を「市場創造」(Market Creation)としている。「需要創造」でなく、なぜ「市場創造」なのか、あるいは「顧客創造」の方がいいのではないかとか、いろいろ考えられるが、ここでは、Wikipediaの「市場(=顧客)創造」をベースに話を展開していきたい。
「『市場創造』とは、市場(=顧客)のすでにあるニーズを満たし(既存市場の維持・拡大)、まだないニーズを探し、満たす(新規市場の創造)活動のことである。」
ところで、デジタルマーケティングの目的とは何だろう。
連載第2回で触れた業界団体などで発表されるユーザー事例を見ると、その成果を示す指標にはコストダウンを除くと、代表的なものとして以下がある。
・インプレッション数 …インターネット広告が表示される回数
・クリック率(CTR)…広告がクリックされた割合
・クリック単価(CPC)…1クリックを獲得するのにかかるコスト
・ユニークユーザー(UU)…Webサイトを訪問した人の数
・ページビュー(PV)…Webサイトが閲覧された回数
・顧客獲得広告単価(CPA)…顧客を1件獲得するのにかかるコスト
・コンバージョン率(CVR)…商品購入や資料請求などの、ウェブサイト上から獲得できる最終成果に至るかの割合
これらの指標は、広告を提供する側が、価格体系として必要だから作られた指標であって、ある意味ハウスエージェンシー内部で使うには便利な指標だが、CVRを除くと、必ずしも企業の「市場(=顧客)創造」を目的に作られたものではない。
つまり「企業のマーケティングの目的『市場(=顧客)創造)』≠デジタルマーケティングの広告主体の指標」なのである。
連載第1回で、「企業のデジタルマーケティングはホームページとアドサーバーからはじまった」と書いた。インターネット広告の延長線上にデジタルマーケティングがある限り、「デジタルマーケティング=経営」とはならず、企業のトップマネジメントは広告主体の指標が理解しにくく、経営との関連性が分からない言葉と映ってしまう。つまり、デジタルマーケティング・マネジャーは、自らの仕事ぶりと成果を評価測定するための明確な尺度が必要なのだ。