「管理からの解放」については、例えば、コンピュータは、ものすごい勢いで、加速度的に進化しています。自社で購入したコンピュータは、古くなったら買換えたり、バージョンアップをしなくてはなりません。

 クラウドであれば、割り勘勝ちするので、クラウド側でこれらの面倒を見てくれます。自社コンピュータの場合は管理者も必要になり、進化するコンピュータに対応した専門家を確保する必要も発生しますが、このことからも解放されます。

 しかしながら、クラウドの本来の価値は、経営者の方には言うまでもありませんが、「ITコストの変動費化」です。

 クラウドは、名著『クラウド化する社会』にもある通り、「ITが、電気や水道と同じように、使いたいときに使い、使った分だけ支払う」ことが、本質的な価値です。

 経営者の方々とお話をすると、リーマンショックやギリシャショックなどを経て学んだことは、「好不況の波にフレキシブルに対応できる、伸縮自在の経営体質」を手に入れることの重要性だそうです。つまり「儲かっているときはたくさん受注が発生し、その処理のために、お金がかかるのは仕方がない、でも、儲かってないときには、受注も少ないので、できるだけお金を支払いたくない」ということだと思います。

 日本においては、設備投資と付随する雇用も、一度行ってしまうと、なかなか「なし」にできない。設備も、例え数年に渡り減価償却できるとしても、固定費化してしまう。つまり、「儲かっていようがいまいが、同じお金がかかる」ことになります。

 クラウドの経営にとっての最大の価値は、このITコストの変動費化が経営体質の改革に寄与することです。

 翻って、冒頭に述べた日米のクラウド利用の違いと、そのことから発生している普及の差について、もう一度考えてみたいと思います。

 儲かっているときに沢山使わなくてはいけなくて、儲かっていないときに利用が減るシステムとは何でしょう。

 直接的な意味では「情報系」ではないと思います。直接増減が大きいのは、なんといっても、受発注システムや会計システム、コールセンターシステムなどの「基幹系」です。

 ところが、前述のとおり日米のクラウドの普及の差は、この基幹系の利用にあります。このことから、日本企業はクラウドの本質的な価値を必ずしも最大化できていない。そのために、経営体質の変革がしきれていないという構図が垣間見えます。

 この背景には、いくつかの課題があると思います。