誰でも、「わかった!」という閃き(ひらめき)経験を持っていると思います。頭の中に一瞬、電気がついたような嬉しい経験です。経営に関わることで「わかった!」となるのはどんな場面でしょうか?

 私自身の「わかった!」経験は、28年間の政府系金融機関での融資の可否判断が非常に難しいケースに直面した時です。企業に出向いての1日の調査で結論を出さねばならない。判断のやじろべえがどちらに傾くか、自分でもわかっていない。時間は容赦なく経過する。それがある時点で「こちらだ!」と決まる瞬間があります。すべてのもやもやした情報がその瞬間に可否いずれかの結論に一斉に集約される瞬間、それが「わかった!」経験です。

 この「わかった!」経験を振り返れば、4つの要素が有機的、統合的に理解されて、実務の要請に解答を与えたということがわかります。

 第一の、かつ最大の要素は業績が芳しくない理由がはっきりすることです。私の経験ではこの課題は部門別採算によって――例えば、小売業なら店舗別の採算です――解決してきました。

 第二の要素は、この業績不振の原因が解消可能なのか否かに答えが与えられることです。経営者自身が特定A店の不振の原因と解決策を検討していれば、そこを確認評価して、答えを出すことが出来ます。

 第三の要素は、申し込みの資金使途が、例えば不振店のスクラップと新店舗開設資金だとすれば、新規開設店の利益計画の妥当性如何という問題です。そこがしっかりと検討されているか。

 第四の要素は、経営は時間との競争という側面がありますから、改善策が効果をもたらすまでに資金繰りが持つかどうかの判断です。

 さて、半ば記憶、半ば創作のケーススタディを整理すれば、「経営がわかった!」経験とは財務情報と経営実務とのフィードバック(行ったり来たり)であることがわかります。そして、このフィードバックが過去・現在・将来という時間的な枠組みの中で行われるということです。

 もう少し具体的に言いましょう。過去の経営の結果が現在の財務情報です。現在の財務情報によって経営の強みと弱みが推測可能です。現在の経営に打ち手を加えれば、将来の姿が描けます。これが利益計画と予想バランスとして将来の財務情報になります。

 結論です。財務と経営のフィードバックを時間軸の中で行う。これが経営改善計画であり、コンサルティングなのです。これが事業金融の根幹にあり、税理士業界における経営支援の根幹にあるノウハウなのです。いずれも「経営がわかる!」ことが大前提なのです。