ベストセラー『財務3表一体理解法』の著者・國貞克則氏が、一流のビジネスパーソンになるための会計をストーリー形式で紹介するウェブ連載。
元上司の石田から「財務3表のつながり」について教わった高橋は、会計を学ぶ楽しさに目覚め、次のステップとして「財務分析の考え方」を学ぶことに。財務3表から何を読み解けば、会社の実態がつかめるのでしょうか?
資本主義社会の仕組みとは何か
先週、石田が教えてくれた財務3表のつながりの説明は、高橋にとってはまさに目からうろこが落ちるといった感じだった。全くわからなかった会計の全体像がおぼろげながら見えてきたように思えた。
その後の1週間で高橋は『図解「財務3表のつながり」でわかる会計の基本』(ダイヤモンド社)を熟読し、『書いてマスター!財務3表・実践ドリル』(日本経済新聞出版社)で、手を動かしていろんな例題を解いていた。減価償却費など、いままでよくわかっていなかった会計の概念が完全に腹に落ちていた。
会議室の椅子に座って、高橋がそんな感慨にふけっていたところに石田が入ってきた。
「おっ、勉強してきたみたいじゃないか」
石田は、高橋の机の上に置いてある2冊の本を見ながら言った。
「ハイ。なんだか急に会計が面白くなってきました」
高橋は、机の上に置いていた本を手に取り、パラパラとめくりながら言った。
「そりゃ、良かった。じゃあ、今日は次のステップに進んで行くぞ」
石田は上着を脱いで椅子の背もたれに掛け、腕まくりをしながらホワイトボードの前に立って、ものすごいスピードで図を書き始めた。
「実は、このPL(損益計算書)とBS(貸借対照表)が資本主義社会の仕組みを表しているんだ」
「?」
高橋には何のことやらわからなかった。
「企業はこのBSの右下にある『資本金』を元手に事業をスタートする。BSの純資産の部のことを『自己資本』と呼ぶことがある。この自己資本だけで事業を行おうとすれば、自己資本の額だけの資産しか調達できない。しかし、もし社外のだれかがこの事業に賛同してくれて『お金を貸してもいいよ』と言ってくれれば、外からもっと多くのお金を集めてきて、たくさん資産が調達できる」
「先週の勉強会で、BSの右側には会社がどうやってお金を集めてきたかが書かれていると教わりましたが、それが資本金などの自己資本と借入金などの他人資本ということなんですね」
「その通りだ」