イノベーション戦略か
コスト戦略か

 ラム・チャラン教授の主張が正しいかどうかは、実際にやってみなければ分かりません。

 ただ、経営戦略を理解し、それに一体化する人事制度・施策をダイナミックに提案できる人事担当者が見当たらないことに多くのCEOがフラストレーションを感じているというのは事実だと思います。

 では、ここまで話してきた、戦略人事とは何かを簡単に定義してみたいと思います。

 戦略人事の概念はとてもシンプルで、経営戦略と人材マネジメントを連動させることで競争優位を目指しましょうという考え方です。

 たとえば、イノベーション(差別化戦略)を目指すグーグルのようなIT企業とコスト戦略を掲げている昔のダイエーのような流通企業で、人材マネジメントのやり方が同じであっては本来おかしいはずです。

 イノベーション戦略であれば、優秀な人材の厳選採用、豊富な教育機会、充実した福利厚生などを整備してトップ・タレントが思う存分実力を発揮できる組織をめざすべきです。

 組織構造もフラットの方がイノベーションが起きやすいでしょう。

 一方、コスト戦略であれば、パート社員などの大量採用、限定的な教育機会・キャリアパス、必要最低限の福利厚生などを選択するのが論理的と言えます。

 まとめると、戦略人事とは、経営戦略をはっきりさせて、それに人材戦略を一致させます。

 そして、各人事機能(採用、教育、評価、報償)間の整合性も保つようにすることで一体感を作りだします。

 そうすることで経営戦略を確実に実行できるようになるというロジックです。

 そう考えれば、CHROやHRBPに何が期待されているのかが見えてきます。

 それは、経営者や事業部門長の右腕として戦略人事を行うことで、経営戦略の達成を人的・組織的側面からサポートすることです。

 言い換えると、人事の専門知識を持ち、ビジネス、人、組織の課題に対する解決策をCoEやシェアード・サービスなどを巻き込んで提案・実現していく社内コンサルタント。それがCHROやHRBPなのです。

 この社内コンサルタントができる人事ジェネラリストをいかに採用し・育成できるかが他社との差別化にとって重要になってきているということが、今のアメリカで大きな課題になっているのです。