日本銀行の資産規模におけるGDP比は2014年末で60%を超えた。同時期における欧米の主要中央銀行は20%台だったので、日銀が突出している(GDPはIMF〈国際通貨基金〉、欧州委員会の予想)。ECB(欧州中央銀行)が量的緩和を始めてもせいぜい30%前後になるくらいだろう。
Photo:Ulrich Baumgarten/gettyimages
一方、スイス国立銀行(SNB)のその比率は14年11月時点で86%だ。リーマンショック前の07年末は23.5%だったので、こちらの膨張も凄まじい。日銀が資産を膨張させた最大要因は日本国債の巨額購入だが、SNBはユーロを中心とする外貨購入だ。スイスフランの高騰を抑えるために無制限の為替介入を行ってきた結果だ。
単純化していえば、円紙幣の価値の裏付けは日本国債の信用力に懸かっており、スイスフラン紙幣の価値の裏付けはユーロなど外貨の信用力に懸かっているといえる。相対的にどちらの中央銀行の資産内容が健全なのかは、極めて微妙な問題であるが……。
そのSNBが1月15日に無制限介入の終了を宣言した。“空中分解”のような突然の終わり方だった。大損失を被った市場関係者や、スイスの輸出企業は当然ながら激しいブーイングを発している。
しかし、実はスイス国内では無制限介入を続けることに対するブーイングも起きていた。SNBにとっては、「進むも地獄、退くも地獄」の状態にあったといえる。
無制限介入による流動性散布と超低金利政策で不動産ブームが過熱し、家賃の高騰に低中所得層は不満を述べている。今のインフレ率は低いが、「いつかひどいインフレが来るのでは」と不安を感じる市民も少なからずいるようだ。