マクロ経済における目標は「経済成長(景気)」と「物価」の2つ。経済成長はGDP(国内総生産:Gross Domestic Product)、そして物価はCPI(消費者物価指数:Consumer Price Index)の伸び率でみます。
実は、成熟しつつある先進国のマクロ経済運営(政策)には、“知っている人は知っている共通の目標”があります。それは、経済成長は3%、物価は2%というものです。荒っぽく言うと、経済成長とは企業においては売上、個人ではお給料に近いものとも考えられます。つまり、3%から2%を引くと粗々1%の実質利益になると考えられます。実際、この物価上昇率2%という数字は、日本の物価上昇率の目標にもなっています。
経済の目標は
経済成長と物価をセットで考えるべき
経済の目標を考えるときは、経済成長と物価をセットで考えることに意味があり、物価だけだと意味をなさないのです。物価だけが上がっても、庶民の生活は苦しくなるし、嬉しいはずがありません。この点、2012年12月からアベノミクスが始まって2年ほど経ちますが、インフレ目標の目的は、庶民のためではないことにだんだん気がつき始めているのではないでしょうか。そこに後ろめたさがあるのか、安倍政権は企業に対し「給料を上げよ」と盛んに言っているのはある意味わりやすいともいえます。
インフレーション(インフレ:Inflation)とデフレーション(デフレ:Deflation)という言葉があります。インフレは物価上昇が継続する状態、デフレは物価下落が継続する状態です。景気が良くなれば、モノに対する需要が高まり、物価が上がっていきます。これは正常なプロセスであり、世で言う「良いインフレ」です。一方、景気が良くならずに、物価だけが上がっていくことを「悪いインフレ」と呼びます。
以前の日本では、景気悪化と物価上昇が同時に起こるという「スタグフレーション(Stagflation)」の状態もあり、それは外部からの石油ショックの時に発生しました。
デフレ脱却の掛け声に
惑わされていないか?
安倍政権はよく「デフレ脱却」という言葉をつかいます。この言葉は、本来の経済学的な意味では、デフレからの脱却=物価下落を止めることです。しかし、安倍政権の場合「景気回復」の意味も含めているように感じられないでしょうか。本来の役割分担でいうと、物価安定は中央銀行たる日本銀行の役割で、経済成長は政府の役割です。もちろん、日本銀行の行う金融政策も金利を下げることによって景気を刺激しますが、そもそもその効き目は強くはありません。
人の体でいうと「物価は血圧」と考えられています。運動したら血の巡りが良くなり血圧は上がるでしょう。しかし、今の日本経済の状態は身体を動かさないで(寝たきりのような状態で)、大量の輸血で血圧をあげようとしているように思えて仕方がありません。輸血をすると一時的に元気になりますが、本当に悪い患部は治さないので、放っておくからさらに悪化します。
最近では、ゼロ金利を超えて、量的金融緩和まで行っています。国の経済状況を検討する時、国の経済規模であるGDPと比較しますが、資金供給量が米国はGDPの“2割”までになっていますが、日本はすでになんとGDPの“7割”にも達しています。