「103万円の壁」「130万円の壁」
「妻扶養手当の壁」で異なる被扶養者の判定基準
前回のこの欄で、パート収入の「3つの壁」について書いた。実際のところ「103万円の壁」は存在せず、世帯の手取り収入を減らさないためには「130万円の壁」と「妻扶養手当の壁」に注意しなくてはいけない。
では、みなさんはパート収入が扶養の範囲内であるかどうかは「いつから、いつまで」の収入で判定されるのか、ご存じだろうか?
結論から言うと、「103万円」の判定は1月から12月であるが、残りの2つについては加入の社会保険の種類や勤務先の規定により「ケースバイケース」なのである。
「103万円の壁」は税務上の扶養のボーダーだ。所得税は暦年で課税されるので、妻のパート収入が「1月1日から12月31日」で103万円以内であると、夫は自分の収入に対し配偶者控除を受けることができる。
「130万円の壁」は社会保険に関するものだ。日本の社会保障制度は、厚生年金や共済組合に加入する夫によって生計が成り立っている妻や子などを「被扶養者」ととらえる。被扶養者は、公的年金や健康保険の保険料を自ら払わずに済み、その際の妻の年収は「130万円未満」であることが要件となる。
この「被扶養者認定」の判定期間が一律ではないのだ。厚生労働省は「できる限り直近の収入で判断するのが望ましい」としているが、“直近”は過去のどれくらいの期間なのか、それとも将来なのか明確な記載はない。
継続的に年収130万円未満で働いているパート主婦なら1~12月の収入で判断されるケースが多数だろう。夫の年末調整時に妻の年収の記載を求められるので、夫の勤務先はそこで年収チェックができる。
しかし、妻が年の途中で働き出した、もしくは退職したといったケースは悩ましい。こうした場合、法律に基づいた共通の認定ルールはなく、実務上は加入の健康保険が設ける独自の基準で判断される。「加入の健康保険」とは、会社員なら健保組合もしくは協会けんぽ、公務員なら共済組合である。