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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

ロケットを3回爆発させても
経営理念をあきらめない強さを学べ

――「MITスマーテストカンパニー50」を見て思うこと

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第9回】 2015年2月19日
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ウーバーは
シェアリングエコノミー代表企業

 次に紹介する、配車サービスのウーバーは、誰でもできそうなことをソフトウェア開発によってビジネスに仕立て上げた会社です。

 いわゆるソーシャルネットワークには次の5つの分野があるというのが、私の持論です。このうちウーバーは、第5の「シェアリングエコノミー(共有経済)」を実現しています。

(1)クラウド
(2)クラウドソーシング
(3)クラウドファンディング
(4)ゲーミフィケーション
(5)シェアリングエコノミー

 シェアリングエコノミーとは、ソーシャルメディアを通じて個人間で自動車や住宅などを貸し借りして成り立つ経済の仕組みのこと。ウーバーは、個人が持っているクルマでタクシーのように利用者を目的地に届けるサービスを、世界数十カ国以上で提供しています。利用者はスマホアプリでタクシーを呼び出し、料金はあらかじめ登録したクレジットカードで決済します。

 また、50社には入っていませんが、自宅の空きスペースを旅行者などに貸し出すウェブサービスを展開している「エアビーアンドビー(Airbnb)」という企業もあります。米国では、草刈機や洗濯機などシェアリングエコノミーの対象がどんどん広がり、この1年でマーケットが大きく拡大しています。

シェアリングでクルマ社会、
自動車産業が大変化

 シェアリングエコノミーが進展していくと、社会はどう変わるのでしょう。

 まず、クルマ社会や自動車産業が大きく変化する可能性があります。クルマを買う人は激減し、自動車産業は大きな痛手を被るでしょう。クルマがアプリで簡単にシェアリングできるなら、クルマを所有して駐車場を借りたりメンテナンスしたり税金を支払うのはもったいないと考える人が増えるからです。

 しかし、ウーバーとてこのままずっと安泰とはいえないでしょう。将来、CPUが人間の脳を凌駕するシンギュラリティ(技術的特異点)を迎えると、クルマは基本的に自動運転になり、ドライバーはもはや不要。

 運転どころか所有の必要もなくなる。自分で使いたいときに、目的に合わせてクルマを選び、アプリで呼び出せばいいのです。目的地に着いたらクルマは自動運転で帰っていくから、今のデパートにあるような大きな駐車場もいらなくなります。

 あと20年経つと、高速道路で人が運転するのは違法になるとさえいわれています。そんな時代に、わざわざクルマを買うのは「1964年に発売されたフォード・マスタングを購入する人たち」のような一部のマニアだけ。単にクルマを売るというだけでは、自動車産業は生き残れないでしょう。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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