サスニンベンでは代々、塩干物、鮮魚の扱いだけではなく、漁業経営にも関わってきた。威志さんも遠洋まぐろはえ縄漁業の経験を積んでいる。よって、いまいちばんおいしい漁場、旬を熟知しているのだ。

「サスニンベンでは、干物になる前の『原魚』に徹底的にこだわっています」(威志さん)。その魚種の最高の干物を作るためには魚そのものが最高でなければはじまらないという、強い信念がある。よって、獲れる漁場や時期を吟味し、最も優れた魚を選ぶ。

 地元である常磐沖の魚も当然使用するが、それだけにこだわらない。判断基準はあくまで「最高の干物を作るために最高の魚を選ぶ」。だから、サスニンベンの干物の原魚は日本各地ばかりか海外にまで及ぶ。視点がワールドワイドなのは遠洋漁業の経験ゆえ。「本当に美味しい干物を食べてもらいたいんです」と威志さんは語る。

 イワシなら漁場は、地元常磐沖。5~6月ごろ頭から全部食べられる手ごろなサイズに成長したものを丸干しに。サンマなら漁場は北海道色丹島南東沖、9月半ば~10月半ば頃までに獲れたもの。アジはイギリス・フランス・オランダに囲まれたドーバー海峡、フランス側の瀬に付いた真アジ、金目鯛はミッドウェー・天皇海山海域。日付変更線の手前の海域。東経170度以東、北緯30度以北。いずれも厳しくセグメントして選定している。

サスニンベンのギフトボックスを使った、おしゃれなディスプレイ。店内は思わず写真に撮りたくなるスペースがてんこもり

 サスニンベンの干物を見るとアジもさんまもホッケもシュッと「細長い」スタイルではなくふっくら「丸い」。「美味しい干物を選ぶなら丸いもの!」と威志さん。それは、まるまると太って脂ののった魚を使っている証拠だからだ。

 こだわりぬいた原魚は「秘伝の塩水」に漬け込む。なんと20年も熟成させたという塩水に真昆布を使った「藻塩」、長崎県の海水を使いにがりをほどよく含んだ「いそしお」、那珂湊沖の海洋深層水を凝縮した「海洋ミネラル」をブレンド。海水に近い状態を再現した塩水にゆっくり漬け込むことで旨みを引き出す。

 そののち、独自の乾燥設備を使い、短時間で水分を蒸発させて、鮮度を保ったまま極上の干物として仕上げる。「日本各地、世界中から探した」珠玉の魚たちが、こだわりの技術で珠玉の干物となる。

 そんな干物は、魚が苦手なひとでも美味しいと言って食べてくれるそう。「『魚嫌いだった子どもたちが、サスニンベンの干物は、美味しい!と食べてくれるんですよ』と言ってくださるお客様もいます。子どもはホンモノの味がわかりますからね。うれしいです」と威志さん。

 サスニンベンのまるまるした干物を焼いてみた。ふっくら、ほどよくジューシーな脂のり。旨みが凝縮した身にやさしく塩味がなじみ、食べるたびに思わず「微笑んでしまう」美味しさだ。

 食べ進めるうち、なんだか「やさしい気持ち」になってくる。「ああ、幸せ」。ストレスまみれの忙しい日本人こそ、じっくり干物を焼いて、味わい、元気になれる「食卓で干物ヒーリング」が必要ではなかろうか。