男の不妊治療の末に授かった3人の子
ユカイ 受精か〜。うちの子どもは俺の『タネナシ。』に書いたとおり、男の不妊治療をやった末に授かったんです。何度か失敗して、妻はえらく苦労したし、授かるだけでもありがたかったよね。
奥田 拝読しました。「男の不妊治療」ですか?
ユカイ うん、俺は「無精子症」だった。無精子症の人は100人に1人くらいの割合でいる。不妊の原因は女性にあると思われることが多いんだけど、実際には男性に原因がある場合が4割、女性に原因がある場合が6割くらいといわれてる。
女性は「原因は自分にあるんじゃないか」と思って積極的に受診するんだけど、男性は「自分は大丈夫」と思っている場合がほとんど。子どもを授かるという意味では、男と女の責任はフィフティ・フィフティだと思うよ。
奥田 どういう検査をされたんですか?
ユカイ 男性の場合は、精液検査。それだけで終了。その結果、「無精子症」だとわかったんだ。精液の中に精子が1匹もいなかった。これは精神的に辛かった。死刑宣告を受けたみたいにね。
奥田 不妊治療はどうやるんですか?
ユカイ 俺の場合は「閉塞性無精子症」だったから精巣から直接精子を取り出し、その後顕微受精を行った。すると妊娠の可能性がある。
奥田 手術は痛いんですか?
ユカイ 恐怖心より痛くはなかったよ。それから「乏精子症」というのもある。精液中の精子の数が少ない。こういう人も増えているみたい。
奥田 増えているのは明らかなようです。でも、世間的にはそういうことはあまり知られていないですよね。
ユカイ そうなんだよね。とてもデリケートな問題だから、『タネナシ。』を書くときには正直迷いがあった。俺は子どもを授かるのに成功したけど、そうではない人もいるから。
でも、男性側に原因があっての不妊や男性の不妊治療というものが世の中に浸透していない。俺の講演会に、「この本を読んで知りました。調べたら自分も無精子症でした。それでいまパートナーとがんばっています」という人がいて、このときは書いてよかったのかなと思ったよ。
奥田 検査や治療を受けるのも、こうした本を書くのも勇気がいりますね。男は「痛み」や「恥」に弱いものですから。
ユカイ チャレンジだね。新しい扉を開けるという感じだよね。
奥田 人生そのものがロックですね! すごくいい言葉だと思います。
ユカイ 挑戦することに意味がある。挑戦すると何かが残る。だから簡単な道を歩いていくより、人のやらない仕事をして、もがき続ける。ここに生きる意味があるんじゃないかなと思う。子育ても同じ。いろいろな勉強をしながら、いいと思ったことは実践しています。