私の勤務先、ボストン コンサルティング グループ(BCG)では新卒・中途を問わず多くの方々を採用させていただいています。昨年10月、私の発案で新規入社の方々を集中育成するための新しい試みをスタートさせ、「HATCH」(ハッチ=卵から孵化させるという意)と名付けました。

 BCGというと、最初から優秀な学生が集まり、人材育成に苦労することは少ないだろうと思われるかも知れませんが、そんなことはありません。人材育成という点では、いずこの会社も同じ悩みを持ち、試行錯誤を繰り返していると思います。私も今、その責任者として、人が育つとは、育てるとは、という問題をめぐる悩みに日々向き合っています。

ひらい・よういちろう
ボストン コンサルティング グループ(BCG) パートナー&マネージング・ディレクター。1974年、東京都生まれ。米国の公立高校を卒業後、東京大学経済学部卒業。三菱商事を経て、BCGへ入社。その後、ウォルト・ディズニー・ジャパン、オリコン取締役副社長兼COO、ザッパラス代表取締役社長兼CEOを経て、再びBCGに入社、現在に至る。ネットサービス系企業における経営経験などを活かし、デジタルコンテンツやEコマース領域などを中心に、企業戦略や事業開発、グローバル戦略等、数多くのプロジェクトを手掛ける。

 “社会人として成長する”とはどういうことか、どうすれば成長できるのか。育成する側、される側の両方の視点に立ち、それをどうとらえているのか、とらえるべきかを考えていこうというのが、本連載の目的です。私自身もいまだ成長途上で、連載とともに成長していければと願っています。

 さて、いざやろうとすると「育成」は本当に難しい。育成の仕組みが充実していても、育てられる側に成長しようという意欲がなければ成立し得ない。かといって「子どもじゃないんだから成長なんて自己責任」で片づけてしまえば、永遠に「育成」というものに対する解を得られません。また、育成に普遍的に必要な要素は何か、時代とともに変えなければならないのは何か。育成がうまくいっているように見える会社とそうでない会社とでは何が違うのか…。

 そうした悩みの中で、そもそも自分の場合はどうだったのか、と思い返すことが多くなりました。自己紹介を兼ねて、連載前半では主に、三菱商事→BCG(1回目)→ディズニー→オリコン→ザッパラス→BCG(2回目)と様々な会社を経験させていただいた過去経験を振り返り、「育つ」「育てる」という難しいテーマを考える端緒にしたいと思います。