財政再建の重要性を首相に直言
「お里が財務省」だから?
2月12日に行われた経済財政諮問会議の席上で、黒田日銀総裁が安倍首相に対し、将来の国債利回りの上昇リスクと財政再建に向けた努力の必要性について「財政の信頼が揺らげば将来に金利急騰リスクがある」(『日本経済新聞』2月12日)と直言したとされる。これは議事録に載っていないオフレコ発言だが、会議の関係者を通じて外に聞こえてきた。
このオフレコ発言をどう聞くべきか。日経の記事の見出しのように、「政府と日銀、転機の蜜月」と捉えるべき話なのだろうか。
黒田総裁は、就任時以来、政府の財政規律について強硬な発言をする点で、これまでの多くの日銀総裁と一味違っていた。他の総裁は、財政は日銀の専管事項でないこともあってか、建前あるいは将来の言い訳の前振りで、理念として財政再建の重要性に言及する印象だったが、黒田総裁は財政再建のために消費税率を引き上げるべきだという意見を隠さない。
遠慮無く言うなら、黒田総裁には「お里が財務省だからなあ」と感じさせるところがある。
彼は、経済政策に対する信条として、金融緩和の物価とGDPに対する効果を強く信じていて、財政政策に関しては景気対策に適当だと思っていないのかもしれない。金融緩和で景気を拡大して、財政再建を援護射撃できると考えているかのようなイメージだ。
しかし、黒田総裁が強く求めた消費税率の5%から8%への引き上げは、彼の第一の目標であったはずのデフレ脱却に対して強い逆風となった。彼は、どこに自分の見立て違いがあったのかを、考えておくべきなのではないか。