がん、心臓病、脳卒中などの大きな病気の治療を病院で行った後、症状が安定すれば、いずれ自宅に戻ることになる。そんなときに重要となるのが、日頃、お世話になる主治医(かかりつけ医)探しだ。そこで、頼れる診療所はどこか。『ダイヤモンドQ』編集部では、医療体制をベースに、24時間体制で在宅医療に対応する高齢者医療に強い東京都内の診療所ランキングを作成した。地域医療を支えるランキング上位の診療所を紹介する。

順位 診療所名 住所 得点合計(100点満点) 総合的医療体制 在宅医療体制 糖尿病のケア がんのケア スタッフ体制 診療所の性格
1 成城内科 世田谷区 89.0 12.5 12.5 - 10.0 4.0 訪問診療・在宅診療専門の医療機関
1 岡田医院 練馬区 89.0 12.5 12.5 - 10.0 4.0  
3 東伊興クリニック 足立区 87.5 12.5 10.0 - 10.0 5.0  

「小さいグラスにほんの少しだけ注いで飲んだらよく眠れましてね」とベッドで診察を受けながら、笑顔で話す男性(87歳)。

「より良い生活を送れるようにすることが大切。一緒にがんばりましょう」と励ます野村院長(右)

 数ヵ月ぶりに口にした大好きな日本酒で気分が晴れたらしい。そんな様子に「成城内科」(診療所ランキング1位)の理事長を兼任する野村明院長が目を細める。

「少しずつならいいでしょう。奥さんの目が怖いですけどね」と話すと、部屋に笑い声が響いた。

 男性は転倒して背骨3カ所にひびが入り、腰椎もずれるなどの重傷を負ってベッドでの生活を余儀なくされていた。

 筋力の低下で神経が圧迫され、左足もまひしていたという。「このままでは寝たきりになるのでは」と奥さんが懸念していたところ、男性が通院していた皮膚科クリニックの紹介で野村院長が男性宅へ駆け付けたのは昨年3月だ。

 骨の強化剤を注射するなどの治療と訪問リハビリテーションを開始。根気強く続けた結果、わずか半年余りで歩けるまでに回復した。

 今では介助があれば、散歩がてら近所のスーパーなどへも足を延ばす。回復していく夫を見ながら「訪問診療があると知らなかったので、先生が来てくれて助かりました」と奥さんの笑顔も絶えない。

 在宅医療は患者が高齢になるほど病状や生活の質(QOL)の維持が鍵となる。

 成城内科は在宅の末期がん患者を対象にターミナル(終末期)ケアも行っており、訪問リハビリを組み合わせるなど患者のQOL維持に努めている。このため、周辺の大学病院などからの信頼も厚く、紹介患者を含め年間50人以上を在宅でみとる。

 野村院長は「在宅患者でも早期介入すれば、体の回復はもちろん、QOLも元に戻せる可能性が高くなる」と強調する。

 成城内科は在宅医療専門のクリニックだ。医師は非常勤も含め13人。訪問先の8割以上が半径5km圏内で、1日5~6人の医師と訪問看護師5人、訪問リハビリを行う理学療法士・作業療法士5~6人が手分けして延べ100軒以上巡回する。さらに1日数回のミーティングで患者らの最新情報を共有する。

 訪問診療は医師と看護師の組み合わせが一般的だが、成城内科では医師とアシスタントのペアで巡回する。その理由について野村院長は「看護師やリハビリスタッフらの高い専門性を患者のケアに集中させるため」と説明する。成城内科は夜間の不安を解消するため、できるだけ昼間の訪問を手厚くしており、訪問診療にも1軒当たり平均20~30分費やす。

 一方、地域での連携体制も万全だ。周辺の訪問看護ステーションやケアマネジャーらと常に情報を共有するほか、歯科クリニックと連携し誤嚥性肺炎などを防止する口腔ケアの勉強会も開催。加齢や糖尿病などに伴う白内障といった目の病もケアするため、眼科クリニックとも連携している。ヘルパー、薬剤師らとの勉強会も欠かさない。

 成城内科が産声を上げたのは介護保険導入前年の1999年。新宿区内のクリニックで経験を積んだ後、成城学園前の1LDKのマンションで、大学同期の友人医師と事務職員の3人で立ち上げた。31歳の駆け出しだった。

 今後は病院の高度な専門医療と日常の在宅医療を並行する「パラレルケア」に注力したいという。