患者数、手術数といった治療実績だけでなく、専門医数や医療体制などのデータも参考に、ダイヤモンドQ編集部が心臓病に強い病院ランキングを作成した。心臓病に強い上位病院の多くには、世界的にも実績のある有名医師が在籍している。首都圏で上位にランクインした病院の“神の手”を紹介する。

順位 病院名 住所 得点合計(100点満点) 患者数 手術数 専門医数/病床数 医療体制
1 小倉記念病院 福岡県 91.7 17.1 17.5 0.6 6.5
2 仙台厚生病院 宮城県 89.6 17.5 13.8 0.8 7.5
3 千葉西総合病院 千葉県 82.6 12.1 12.1 0.9 7.5

 心臓病部門で4位となった「新東京病院」の中村淳院長は30代でカテーテル手術を学び、経験を積んだ40代でそれを昇華させた。50代の今は、心臓血管センター長として陣頭指揮に立つ一方、後進の指導にも余念がない。 

「自分より優れた医師を一人でも育てたい」と新東京病院の中村院長

 中村院長は冠動脈硬化症のカテーテル手術なども年間約2000件こなす心臓カテーテル手術のスペシャリスト。太い指が紡ぎ出す繊細な技で、これまで3万人余りの命を救ってきた。そんな評判を聞きつけ、多くの若手循環器内科医や医学生らが「中村学校」の門をたたく。

 覚悟を決めて弟子入りした医師たちに求められるのは、自分と対峙する「医師」であり続けること。現代医学は先人の医師たちが積み重ねてきた努力と経験伝承のたまものだ。「その作業を引き継いで記録に残すことは、今のわれわれにとっても当然の使命」(中村院長)。

 このため、同院は若手医師らに経験を積ませる一方、その検証・評価などを論文にまとめるよう指導している。

 欧米では民間病院の勤務医も論文を執筆・発表するが、国内では専ら大学関係者の仕事だ。だが、同院は年間20本もの英語論文を発表している。英語で論文を書かせるのはブラッシュアップした医療技術を世界中の病院へ普及させるためだ。

 中村院長も自ら中国や台湾、インド、ベトナム、イタリアなど11ヵ国の病院・大学で心臓カテーテル治療の技術指導を20年間続けている。現在は国内外の9大学で客員教授を務める。また、14大学と提携する同院はタイや韓国などから研修生を受け入れている。

 こうした中村院長の情熱が浸透した同院は、年間2000件以上の心臓カテーテル手術をこなす。2013年10月に保険適用されたカテーテルを使った心臓(大動脈弁)の人工弁置換手術(TAVI)は、心臓内科・心臓血管外科合同の「Heart Team」(6チーム)が一昨年12月から行っている。ここ10年、心筋梗塞などの救急患者も全て一命を取り留めているという。

 一方、看護師や臨床工学技士ら医療スタッフ(コメディカル)のプロ意識も高い。同院は心カテの手術室を7部屋備え、1日30~40人治療する。手術前日に担当スタッフ全員で各患者の情報を共有し、当日朝にも再度確認。心臓内科の入院患者150人は、25人の循環器内科の医師と医療スタッフで担当する。中村院長は「医療スタッフも頻繁に勉強会などを開催しており、(医療の)クオリティコントロールへの意識が高い」と信頼を寄せる。