担当職員のうっかりミスで、固定資産税などを長年過大に課していた自治体のトンデモナイ事例を、前々回(第128回)、前回(第129回)と続けて紹介した。「あってはならない重大ミス」が、実は「どこでも起こり得るミス」だと知り、ビックリ仰天した読者も多いのではないか。行政も間違いを犯すものだと認識し、住民自ら課税ミスされていないかどうか調べてみる必要があるかもしれない。
そもそも納税は国民の義務であり、課税と徴収はルールに基づいて公正・公平に行われる。課税・徴収に担当職員の恣意や裁量が入る余地などなく、特定の納税者を特別扱いすることもあり得ない。それが民主国家、法治国家の日本社会の大原則である。
担当者によるうっかりミスは起こり得るが、担当者が意図的に手を加えるようなことはない。もし特定の住民に手心が加えられていたら、それは犯罪行為と言える。到底、許されることではない。そうした行為が長年、見過ごされていたら、日本社会は根底から崩れ去ってしまうだろう。真面目に納税する人などいなくなってしまうからだ。
あってはならぬ税金徴収のお目こぼし
しかもそれが「議員」だとは……
だが、その決してあってはならないことが自治体の徴収現場で起きている。特定の住民に対する「税徴収のおめこぼし」である。住民税や固定資産税などの地方税を滞納している地方議員を特別扱いし、差し押さえなどの処分をせずに見逃しているケースが発覚している。
まさかそんな不公平なことを日本の行政がやるはずはないと思うかもしれないが、現実にそうした事例が存在する。そもそも発覚しにくい類の話であるし、表面化してもなぜかメディアがきちんと報じないため、地元住民でさえ知らされていないのが実態である。
すでに連載第87回で香川県土庄町のケースを紹介した。町議会議長が固定資産税など約1754万円(延滞金を含む)を滞納し、さらには時効により約1790万円もの不能欠損処理(債務免除)を受けていたという事例だ。町は議員報酬などへの差し押さえをしなかったのである。あってはならない特別待遇によって税の支払いをチャラにしてもらった議長は、その後、町長選に出馬して勝利した。税を徴収する側のトップに就任したのである。