“穏やかな上昇”にはならない
重要なのは“変化の速度”への対応

 一方で、より大きな上昇となるアップサイドのリスクもある。

 まず、原油価格の低迷が続いて、鍵となるような産油国の経済が混乱し、原油供給に支障が出る場合だ。

 今のところ表面化していないが、財政状況が悪化しているベネズエラやナイジェリアでの治安が悪化し、あるいは政府に抗議するためのストライキが起きるなどして供給が停止してしまうことは、可能性としてあり得る。「アラブの春」でリビアからの供給が停止して原油価格が上昇したのは記憶に新しいところだ。また、原油価格が低ければ、積極的な開発投資が行われないため、このことも将来の価格上昇リスクを高めよう。

 原油価格の下落によって供給が途絶する、というリスクに関してはロシアもその対象となり得るだろう。プーチン大統領の支持率は高く(体制崩壊の可能性は低い)、外貨の重要な調達手段である原油販売を停止するとは考えにくいが、欧米の制裁強化に対する報復措置として、原油やLNG、天然ガスの供給を停止するという選択をする可能性も排除できず、予断を許さない。

 価格が下落することは消費国にとってメリットであるため、その面が強調されやすいが、原油価格には程よい上昇があった方が、将来の世界経済にとってはプラスなのである。

 また、イスラム国が中東諸国に拡散し、中東諸国の治安を悪化させていることも将来の原油供給の懸念を高めるものである。

 景気の先行きを懸念して、下落リスクとして挙げたFRBによる利上げが見送られ、ドル安が進行してドル建て資産である原油価格が上昇する、という逆リスクシナリオも想定される。

 原油価格は前述の通り年末に向けて上昇するとは見ているが、穏やかな上昇にはならないだろう。過剰流動性が市場に滞留する中で、上述のように2015年~2016年にかけて原油価格を大きく変動させるリスク要因は多いことから、大きな振れを伴う上昇になると考えている。

 重要なのは、その上昇トレンドを確実に当てることよりも、価格変化の速度にいかに対応していくかを考えることである。メインシナリオ通りの相場展開になればリスクは限定されるが、短期間に市場価格が大きく変動する場合、企業活動に影響が出るのは必須である。

 そのリスクが顕在化してから対応しても余地は限られるため、比較的相場が凪であるうちに様々なリスクシナリオを想定し、対応を行う必要があるのではないだろうか。