防衛省は今月中に国会に提出する予定の防衛省設置法などの改正案で、防衛官僚が主体の「内局」にある「運用企画局」を廃止し、陸、海、空自衛隊の部隊運用(活動、作戦)は制服幹部主体の「統合幕僚監部」に一元化することにしている。

また従来は、防衛大臣が統合幕僚監部や、3自衛隊に対し指示、承認、監督する際、文官の官房長や各局長の補佐を受けることになっていたが(防衛省設置法12条)、今後は制服幹部も大臣を補佐することになる。これにより運用の「迅速性」が向上するという。

シビリアン・コントロールは守られる?
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 自衛隊の最高指揮官は首相で、その下で防衛大臣が指揮、監督に当たる建前は変わらないから「シビリアン・コントロール(文民統制)の原則は守られる」というのは論理的には正しいが、首相も防衛大臣も軍事知識を持たない人々がなるのが普通だから、制服幹部の案と説明に反論ができず、言いなりになる可能性は高いと考えざるをえない。従来の制度ではある程度知識、経験がある防衛官僚が自衛隊の案を審査、論議してのち大臣に上げるから、面倒なかわり、一応の歯止めの役は果たしていた。

 運用企画局を廃止する代わりに、統合幕僚監部に統幕副長と同格の文官を「運用政策統括官」として配置し、その下に課長級の文官の「運用政策官」を置くとするが、これまでは自衛隊の運用を事実上監督する立場にあった運用企画局長の職が、今後は統合幕僚長の部下となる。統合幕僚長が直接大臣に進言し、了承を得て大臣名で自衛隊に運用に関する指示、命令を出すことになる。

 統合幕僚監部は現在でも防衛・警備行動計画の立案など部隊運用だけでなく、そのための編成、装備、配置、経理、調達、人事、人員の補充などの政策的問題もつかさどることになっている(設置法22条)。この条文の解釈しだいでは制服組のトップである統合幕僚長は絶大な権限を持ちうることになる。

 ただ、例えば自衛隊の海外派遣のように、外務省、財務省、内閣法制局、総理官邸などとの調整が済んだのち、防衛大臣が判を捺して閣議決定を求めるような場合には、こうした他省庁との調整は制服自衛官の手に余る仕事だから、防衛官僚は連絡役に活用されるだろう。