貧困に苦しむ母子を
“慈善”でなく支援する人々も

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この報告会では、徳丸氏らによるCPAOの活動紹介・調査報告が行われたあと、調査に協力した伊藤智樹氏(富山大学人文学部准教授)のコメント、湯澤直美氏(立教大学教授・「なくそう! 子どもの貧困」全国ネットワーク共同代表)による基調講演が行われた。
伊藤氏はシングルマザーたちの物語について、本人が「現状から脱出したい」「将来こうなりたい」と考えるに至れない社会構造があることを指摘しつつも、インタビューから
「たくましさ、落ちてゆく中で頑張った」
という側面が多数読み取れることに言及し、
「不利な状況の中で沸き上がってくるものを大事にする、言葉にしてもらうことが大切です。その作業を担う人が必要です」
と述べた。
湯澤氏は、1980年代から現在に至る政治と行政の動き・女性の貧困・特にシングルマザーとその子どもたちの貧困を、豊富な資料とデータによって紹介した。また、シングルマザーたちの経験してきた、数多くの問題を含んだ家族ストーリーについて、「その家族の問題」と捉えるのではなく、「社会全般の問題が凝縮された小集団としての家族の問題」と捉える必要性を強調し、「政府・行政の動きを待たないで、働きかけていきたい」と述べた。
では、自分の生活・自分の仕事・自分のワークライフバランスも大切にしたい一市民にできるような些細なことは、何もないのだろうか?
報告会の最後、CPAOに関わる4名の人々によるパネルディスカッションが行われた。関わり始めたきっかけは、
「仕事の量が時期によって一定しないので、ヒマな時期を活かしたい」(イラストレーター)
「お寺に集まるお供え物を無駄にしたくないので、必要とする方に提供したい」(住職)
「妻がCPAOに関わっていたので、何をしているのか見に行って、そこにいた子どもと遊んだ」(会社員)
「育児が一段落したので、もう一度子育てに関わりたい」(団体職員)
と多様だが、共通しているのは、「慈善のため!」「意義ある重大な活動を!」といった気負いがないことだ。そして異口同音に語られるのは、軽い気持ちで始めて現在も大きな無理なく続けている活動の、想定外の効果と喜びだ。