NISA利用状況に変化あり!?4~6月期のつみたて買付額が減少へ【投資信託の最前線】

「貯蓄から投資へ」の流れを加速させる新NISA。2025年上期(1~6月)の買付額は10.5兆円と、引き続き高い水準を維持。特に「つみたて投資枠」は前年同期比で増加し、堅調な積立投資の広がりを示した。その一方で注視すべきは、成長投資枠の買付額が前年同期を下回った点だ。さらに、「つみたて投資枠」においても、四半期ベースでは買付額が減少に転じている。データが示す、新NISAの現状と、今後の課題について詳しく見ていく。

NISAは好調? 成長投資枠は相場低迷の影響で失速
つみたて投資枠も四半期ベースでは買付額が減少

 金融庁が、2025年9月24日に公表した「NISA口座の利用状況調査(令和7年6月末時点)」によれば、2025年1-6月(上期)におけるNISAの買付額は10.5兆円となりました。その内訳は成長投資枠が7.4兆円、つみたて投資枠が3.1兆円となっています。

 なお、2014年にNISA制度がスタートしてからの累計買付額は63.1兆円に達しています。2022年11月に政府が決定した資産所得倍増プランでは、5年間における累計買付額を2022年3月末時点の27.6兆円から56兆円に倍増させる目標を掲げていましたが、これは2025年1-3月の時点で早々に達成していました。

 特に、2024年に始まった新NISAが買付額に弾みをつけています。グラフを見ると、2024年の買付額が計17.4兆円(成長投資枠12.4兆円、つみたて投資枠5.0兆円)と大きく膨らんでいることがわかります(グラフ参照)。そしてその傾向は2025年も続き、上期だけですでにその半分を超える10.5兆円と、NISAの買付は順調に推移しているように見えます。

 しかしよく見ると、すべてが一本調子に右肩上がりとは言えない「変化の兆し」がうかがえます。 変化の兆しの1つめは成長投資枠の上期の買付額です。2025年上期が7.4兆円と前年同期の7.9兆円を下回っていることがわかります

 ここで思い出したいのが、2025年4月に起こった、トランプ・ショックです。トランプ米大統領が発表した関税案が世界を震撼させ、世界中の株価が急落、低迷する事態となりました。成長投資枠は相場動向の影響を受けやすく、株式相場の下落の影響を受けていたと言えるでしょう。

下落時こそ積立投資を継続することが必要だが
つみたて投資枠も4~6月期にブレーキ

 2つめは、つみたて投資枠の買付額についてです。2025年上期は3.1兆円(前年同期は2.2兆円)となっていることから、買付額は好調が維持できているように見えます。しかし、四半期ごとで見ると、1~3月の1兆6111億円に対して、4~6月は1兆4605億円となり、直近は1500億円ほど減少に転じています。つみたて投資枠でも、年が変わった1月は買付額が膨らみやすい傾向がありますが、それでも新NISAが始まって順調に拡大してきた買付額が4~6月期に減少しているのは気になる動きです。

 買付額の減少の要因として考えられるのは、やはり年初から4月上旬までの株式相場の低迷でしょう。積立投資は、本来はそういった下落時ほど効果を発揮するものではありますが、値動きの大きさなどから積立投資の買付を減らしたり、止めたりといった投資行動があったことが推察されます

 また、1月の投資信託市場への資金流入額の大きさを勘案すると、成長投資枠を使い切った投資家がつみたて投資枠を活用したというケースもあったかもしれません。

 いずれにしても、2025年4月ごろまでのような相場の下落時こそ、つみたて投資を継続することが重要だということを、改めて訴求していく必要がありそうです。

藤原延介さん藤原延介(ふじわら・のぶゆき)●1998年三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入社後、2001年ロイター・ジャパン(リッパー・ジャパン)、2007年ドイチェ・アセット・マネジメント、2019年アムンディ・ジャパンを経て、2021年にBNPパリバ・アセットマネジメントに入社。マーケティング部 部長。ドイチェAMでは資産運用研究所長を務めるなど、約25年に渡り資産運用や投資信託に関するリサーチや投資啓蒙に従事。慶応大学経済学部卒。
◆投資信託の最前線
20年超にわたって投資信託動向を分析してきた藤原延介氏が、投資信託の最新動向やニュースを取り上げて、わかりやすく解説! 2024年から大幅拡大したNISAでは、投資信託での運用が不可欠に。でも「どうやって選べばいいの?」「組み合わせ方法は?」などわからない人も多いのでは? このコラムで投資信託の売れ筋やトレンドの変化をチェックすることで、投資信託の選び方や資産運用法などが見えてきます。
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<ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2025>
[2025年]受賞投資信託30本一覧

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本記事は2025年10月31日時点で知りうる情報を元に作成しております。本記事、本記事に登場する情報元を利用してのいかなる損害等について出版社、取材・制作協力者は一切の責任を負いません。投資は自己責任において行ってください。