北欧とバルト海を挟んで隣接する人口130万人の小国、エストニアが世界各国の注目を集めている。選挙から教育、医療、警察、果てには居住権まで全てインターネット上でできてしまう「e-Government(電子政府)」の取り組みで世界最先端を突き進んでいるからだ。日本からも、楽天の三木谷浩史会長兼社長や経営コンサルタントの大前研一氏が視察に訪れたことで話題になった。
電子政府の先に見据える未来は何なのか。政府CIO(最高情報責任者)に直撃すると、驚くべき答えが返ってきた。
(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 森川潤)
※詳細は「週刊ダイヤモンド」3月14日号「北欧に学べ なぜ彼らは世界一が取れるのか」に掲載。
ロシアに占領されても
国家は電子上に存続する
エストニア政府CIO、エストニア政府の最高情報責任者。もともとソフトウエア技術者、投資家としてスタートアップを設立。2013年に設置されたCIOに就任。
Photo by Jun Morikawa
――まず、エストニアが電子政府の取り組みを始めたきっかけを教えてください。
1917年にロシアから独立を果たした時、エストニアはフィンランド(1917年に独立)よりも裕福でした。
それが、50年におよぶソ連による支配で豊かさが失われてしまい、91年に独立を回復してから、国民が規律と勤勉さによって、新たな発展を目指しました。
電子政府取り組みの背景にはそうした歴史があります。国民は発展のため、公的機関のIT化や自動化に一致して取り組んで生産性を高めてきました。
――日本では電子政府というと、プライバシーを懸念する声いつも大きいです。
エストニアには、他のバルト3国や旧ソ連諸国のような政治汚職はなく、むしろスウェーデンやフィンランドなど北欧各国と同じような透明性を追求しています。故に、信頼を求められる電子政府の取り組みを進めることができています。
番号制に対してプライバシーを心配される方々もいますが、紙の世界の方が、プライバシーが低い場合もあります。実際、われわれは旧国家保安委員会(KGB)の監視下で、プライバシーの無い生活を続けていましたからね。