2010年、欧米の自動車業界を激震させたのが、スウェーデンの自動車メーカー、ボルボカーズの中国メーカーへの売却だ。当時フォードの傘下にあったボルボは、深刻な経営難に直面。フォードは、スウェーデン政府による救済を求めていたが、政府は何とこれを一蹴したのだ。政府は「国として自動車メーカーは所有せず、新たな産業へシフトする」と明言し、同じく破綻危機の状況にあったサーブとともに、自動車産業を“見放し”た。

だが、その後スウェーデンは、ITなどより知識集約型の産業に大きくシフトし企業を輩出、しかも救済されなかったボルボ自体も、中国の浙江吉利控股集団の傘下で、急速な復活を遂げている。福祉で有名な北欧各国だが、産業政策では、企業の新陳代謝を促す仕組みが取られているのだ。この売却から復活までの軌跡について、アラン・フィッサー上級副社長に聞いた。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 千本木啓文)

※詳細は、「週刊ダイヤモンド」3月14日号特集「北欧に学べ」に掲載。

中国企業ではなく
スウェーデン企業だ

アラン・フィッサー
ボルボカーズ上級副社長。ベルギー生まれ。フォード・モーターを経て、2004年、ゼネラル・モーターズに入社し、子会社のオペル役員に就任。12年、ボルボカーズ入社とともに副社長に就任、翌年、セールス・マーケティング、カスタマーサービス担当の上級副社長に昇格。
Photo by Hirofumi Senbongi

――ボルボは1999年、フォードに買収されました。そもそも、ボルボはスウェーデンにとってどんな存在でしたか。

 ボルボは米国や日本などの自動車メーカーと違って、とても小さな会社ですが、スウェーデン文化と結びついた独自の特徴を持っています。石のように動かない遺産のようなものです。

 それは、自動車の安全性を重視する姿勢や、レジャーで自然と触れ合う文化などを反映しています。冬の自然環境に耐えられるように、自動車を北極圏でテストしているのもそのためです。

 われわれはイケアほど、スウェーデンを前面には出していませんが、国産の木材をインテリアに使ったり、シートの端に小さな国旗を付けたりしています。